2020 Fiscal Year Research-status Report
認知リハビリテーションの効果を高める看護学的アプローチの検証
Project/Area Number |
20K11006
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
久保田 正和 大阪医科大学, 看護学部, 准教授 (80452267)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 認知リハビリテーション / 脳活動計測装置 / かかわり |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで一貫して「認知症の方ができること」に焦点を当て、それを支える適切な看護ケアと個々に合った認知リハビリテーションの有効性について研究を行ってきた。特に認知リハビリテーションの有効性や、その効果をより高める看護学的介入について、携帯型脳活動計測装置 (fNIRS)を用い、客観的に評価することに力を入れてきた。現在、多くのデイサービス等では、一律にリハビリテーションプログラムが組まれているケースや、塗り絵や計算問題等を高齢者に渡し、他者との交流無しに一人でタスクをこなす状況が見られ、個々に合った適切な認知リハビリテーションや関わりが行われているとは言い難い。我々が科学的な根拠をもとに適切な認知リハビリテーションや正しいケアにエビデンスを付与することができれば、デイサービス等の規模が大きいだけに、大きな波及効果が期待される。 本研究の目的は、これまでの我々のデータを応用し、実際にデイサービス等において職員が認知リハビリテーションを実践し、その効果を検証することである。具体的には、これまでに得られたfNIRSのデータから①個々に合ったタスクを選択し、②タスクの実行時に職員がかかわりを持つことを実践した上で、その効果を客観的に検証するものである。また、我々のデータでは、他者との関わりが効果を高める可能性が示唆されているため、③新たに集団を対象とした認知リハビリテーションの効果も検証していきたいと考えている。さらには④効率的に実践するためにはどのような工夫が必要なのかを探索する。今年度は、文献レビューを行い、効果的な認知リハビリテーションの実践方法とその評価について検討した。今年度は新型コロナの影響により、対面での認知リハビリテーションの実施が難しく、また、今後そのような状況が起こる可能性も踏まえ、ICTを用いた認知リハビリテーションの実施についても文献検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、現在高齢者施設で多く実施されている認知リハビリテーションの種類やその効果に関する文献検討を行った。また、認知リハビリテーションの実施者によるかかわりによってその効果に与える影響についても文献検討を加えた。その結果、認知リハビリテーション実施時に実施者が介入を行うことで、介入時の脳血流量が上昇し、介入による認知リハビリテーション効果増強の可能性を確認した。また、インターネット通信網を用いた遠隔環境下における患者や家族への認知リハビリテーション介入においても有効である可能性が示唆されるなど、現在のコロナ禍において有用と考えられる方法についてもその可能性を探った。新たに検討する課題も抽出し、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現コロナ禍において、遠隔環境を用いた認知リハビリテーションの実施を優先的に行う。現在は当初の目的であった職員によるグループを対象とした認知リハビリテーションの実施が困難である。ICTを用いた遠隔環境下においても、認知リハビリテーションにおいて実施者の関わりの有効性を示すことができれば、多くの高齢者への実施の可能性が拡がる。具体的には認知リハビリテーションの実施時、遠隔環境下において実施者がかかわりを行い、脳血流量を評価する。対象者はデイサービスに参加する認知症と診断を受けていない65歳以上の高齢者の予定である。被験者が単独でタスクを行った場合と、遠隔環境下で実施者がかかわりながらタスクを実施した場合の脳血流量の変動を測定する。実施者のかかわりは、山口の提唱する認知リハビリテーション活性化の5原則をもとに、個別性を重視したものである。遠隔環境下において効果を得ることができれば、地域活動に参加できない高齢者や僻地に住む高齢者に対してもICTを用いて高齢者施設等で実施されているものと同様の認知リハビリテーションを提供できる可能性がある。
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Causes of Carryover |
当該年度は、コロナ禍により出席予定であった学会が全て中止あるいはオンラインに変更となり、旅費や学会参加に係る費用の支出がなかった。次年度はICT機器の購入や、学会への参加、発表を予定しているので、ICT関連機器の物品費や、旅費で使用する予定である。
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