2021 Fiscal Year Research-status Report
認知リハビリテーションの効果を高める看護学的アプローチの検証
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20K11006
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
久保田 正和 大阪医科薬科大学, 看護学部, 教授 (80452267)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 認知リハビリテーション / 脳活動計測装置 / かかわり |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、これまでに得られたfNIRSのデータから①個々に合ったタスクを選択し、②タスクの実行時に職員がかかわりを持つことを実践した上で、その効果を客観的に検証するものである。今年度は新型コロナの影響により、対面での認知リハビリテーションの実施が難しく、また、今後そのような状況が起こる可能性も踏まえ、遠隔環境下において看護師のかかわりが認知リハビリテーションの効果に与える影響について検討した。対象者は、認知症と診断を受けていない65歳以上の高齢者14名であった。看護師のかかわりは、山口の提唱する認知リハビリテーション活性化の5原則をもとに、個別性を重視した介入を実施した。対象者が単独でタスクを行った時と、遠隔環境下で看護師がかかわりながらタスクを実施した時の脳血流量の変動を、fNIRSを用いて測定した。fNIRSより得られた脳血流量値から中央値とInterquartile Range(IQR)を算出した結果、貼り絵を行った13名のうち左側の脳血流の増幅が見られたのが5名、右側の増幅が見られたのが11名であった。また、クロスワードパズルでは左側の増幅が見られたのが8名、右側の増幅がみられたのが8名であった。山口は認知リハビリテーションを活性化するかかわりの5原則を行うことで、対象者のやる気を引き起こし、集中力を高めることにつながると述べている。本研究では、遠隔環境下で5原則にしたがってかかわりを行った結果、タスクに対する集中力が高まり、結果として脳血流量の上昇につながったと考えられる。以上のことから、遠隔環境下においても看護師のかかわりは認知リハビリテーションの効果を高める可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は文献検討により、現在高齢者施設で多く実施されている認知リハビリテーションの種類やその効果について検討を行った。また、認知リハビリテーションの実施者によるかかわりによってその効果に与える影響についても文献検討を行った。その結果、認知リハビリテーション実施時に実施者が介入を行うことで、介入時の脳血流量が上昇し、介入による認知リハビリテーション効果増強の可能性を確認した。また、新型コロナの影響により、対面でのケアや認知リハビリテーションが困難になったため、インターネット通信網を用いた遠隔環境下における患者や家族への認知リハビリテーション介入においても検討し、有効である可能性を示唆した。2021年度も引き続き、新型コロナの影響により、当初の目的であった職員によるグループを対象とした認知リハビリテーションの実施が困難であったため、現在のコロナ禍において有用と考えられる方法についてもその可能性を探った。その結果、コロナ禍における有用な認知リハビリテーションの効果を示すことができ、また、新たに検討する課題も抽出し、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度もコロナ禍は継続している。また、今後同様の感染症等で、対面でのケアや認知リハビリテーションが困難になる可能性も高い。従って、今後も遠隔環境下におけるICTを用いた認知リハビリテーションの実施を優先的に行う。現在も当初の目的であった職員によるグループを対象とした認知リハビリテーションの実施が困難ではあるが、情勢を見ながら、ICTを用いた遠隔環境下において、職員がグループを対象に認知リハビリテーションを実施する予定である。実施者の関わりの有効性を示すことができれば、多くの高齢者への実施の可能性が拡がる。具体的には認知リハビリテーションの実施時、遠隔環境下においてグループ参加の高齢者に対し、実施者がかかわりを行いながら脳血流量を評価する。対象者はデイサービスに参加する認知症と診断を受けていない65歳以上の高齢者の予定である。被験者が単独でタスクを行った場合と、遠隔環境下で実施者がかかわりながらタスクを実施した場合の脳血流量の変動については2021年度にデータを示したため、今後はその計画を継続することと、職員がグループを対象に遠隔環境下で認知リハビリテーションを行うことを開始したい。遠隔環境下においてグループでの認知リハビリテーション効果を得ることができれば、地域活動に参加できない複数の高齢者や僻地に住む高齢者に対してもICTを用いて高齢者施設等で実施されているものと同様の認知リハビリテーションを提供できる可能性がある。
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Causes of Carryover |
研究開始当初から新型コロナの影響により、学会の開催形式が全てオンラインであり、予定していた学会参加に伴う支出がなかった。今後は研究の進捗を早めるためにも、脳活動計測装置の追加購入を検討する。また、情勢にもよるが学会への参加、発表を積極的に行う予定である。
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