2020 Fiscal Year Research-status Report
地域包括ケアシステムのもとでの在宅災害看護理論の構築に向けた基礎的研究
Project/Area Number |
20K11008
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Research Institution | Kobe Tokiwa University |
Principal Investigator |
畑 吉節未 神戸常盤大学, 保健科学部, 教授 (10530305)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畑 正夫 兵庫県立大学, 地域創造機構, 教授 (40596045)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 災害看護理論 / 在宅災害看護 / 地域包括ケアシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
1.コロナ禍による対面でのインタビュー調査に制約が生じたためスケジュールを再構成して、在宅療養者が災害により受ける健康への影響とその回復過程を捉える災害看護理論の構築に向けて必要な枠組みの検討を進めた。本研究の目的である「生活の持続と再構築」関する在宅災害看護理論の構築を図るため、疾患を抱え在宅で生活する療養者と病いとの関係性を俯瞰的に捉えるための枠組みの検討を行った。 2.検討に当たっては、慢性疾患患者に関する看護モデルであるCorbin, Strauss(1992)による「病みの軌跡」(trajectory framework)を検討の枠組みとした。病みの軌跡は、療養者の状況を単に病気や症状の経過を見るだけでなく、医師や看護師、療養者、家族などの関係者が病いの経過とそのコントロールのためにとった行動をとらえる。この枠組みを用い、災害場面と療養者と家族の療養における生活史と関連づけて事例検討を行った。用いた事例は先行研究で構築した語りのデータベースに蓄積したものである。 3.ALS療養者の家族の語る病みの軌跡のなかで災害体験をとらえ分析を行った結果、いくつかの重要なキーワードを抽出することができ、用いた枠組みの有用性を概ね確認することができた。在宅看護の特性を踏まえ利用者中心の災害の備えを考えるためには、病院での災害対応とは異なり療養者・家族の主体性が尊重させるなかでは、療養者・家族の語りが理論構築に重要な役割を果たすことが明らかになった。 4.理論構築に必要な災害看護実践行動を捉える際に、療養者・家族の病みの軌跡に関わる行動と課題を収集することの重要性を踏まえ、語りのデータベースの充実のために必要な調査項目の精査に生かした。なお、得られた成果は日本難病看護学会で口頭発表するとともに、『難病と在ケア』に寄稿(依頼原稿)した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍による対面でのインタビュー調査に災害に関する語りのデータベースの充実に制約が出たが、全体のスケジュールの再構成し進捗状況への影響を最小限に留めた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.在宅災害看護理論の構築に向けた検討を進めるため、「病みの軌跡」を暫定的な枠組みとして検討を進めるとともに、“健康危機状況”への対処に用いられている既存の看護理論から在宅災害看護に用いることがふさわしいものの探索を行う。 ・療養者・家族と訪問看護師を中心に病みの軌跡を制御する行動を検討するため、既に蓄積した語りのデータベースから災害時の軌跡の諸側面に影響を与える出来事を抽出し、個別の対処行動に適する看護理論を紐付け、長期の療養生活を想定した健康の揺らぎの抑制に資する理論群の抽出とそれらの相互関係について検討する。 ・在宅看護における対象理解である病みの軌跡を想定する上で鍵となる「ケアの焦点」、日常への円滑な回復に向けた療養者の「生活の持続」について、療養者、家族の療養体験についての文献検討を行うとともに概念分析(Walker & Avant 2018)を行う。 ・新型コロナウイルス感染症がもたらす“健康危機状況”が病みの軌跡の諸局面に与えた影響についても調査検討を行う。 2.コロナ禍が落ち着いた段階で、災害体験の分析を深めるために地震災害や豪雨災害などの被災地での経験をインタビューにより収集し、現有の語りのデーターベースの充実を図る。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で計画していたデータ収集のための旅費が使用できていない。次年度に今年度の分のデータ収集の旅費を活用したと計画しているが、感染症の蔓延状況によっては臨機応変にデータ収集方法を工夫する必要もあると考えている。
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