2022 Fiscal Year Research-status Report
Examination of Physical Assessment Required for Early Detection of Oral Frailty by Delphi Study.
Project/Area Number |
20K11031
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
寺島 涼子 杏林大学, 保健学部, 講師 (10614018)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オーラルフレイル / 早期発見 / フィジカルアセスメント / デルファイ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
オーラルフレイル(加齢に伴う口腔機能の軽微な衰え)は高齢者のフレイル・サルコペニア・要介護状態に先立ちが生じることが明らかになっており、健康寿命の延伸を目指すうえで重要な概念となっている。本研究は、身体的側面のみならず生活的側面をも網羅する看護分野におけるフィジカルアセスメントに着目し、オーラルフレイルを早期に発見のための評価項目の検討を行う。研究方法は、専門的知識や経験的判断を有する専門家グループに対し複数回アンケート調査を行い、専門家の意見を集約するデルファイ法を用いる。本研究では専門家グループを全国の摂食嚥下障害看護認定看護師と設定した。 令和2年度~令和3年度は、倫理審査委員会より承認を得たのち、デルファイ調査に用いるアンケートの原案作成のために、関連する専門書籍および論文からオーラルフレイル早期発見に関わるフィジカルアセスメント項目の抽出を行った。結果、120項目が抽出された。次に、項目の重複や網羅性、表現のわかりやすさを検討するため、摂食嚥下障害看護認定看護師4名に対し、グループインタビューを計3回実施した。令和4年度は老年歯科専門医および老年医学の専門家からフィジカルアセスメント項目に対するスーパーバイズを受けた。結果、フィジカルアセスメント項目は90項目となり、質問紙の原案が完成した。 また、研究成果について第27回日本在宅ケア学会学術集会にて発表を行った。さらに、早期発見の「早期」をより具体化するために文献による検討を行い、結果、日本歯科医師会が提唱する第1~第4レベルからなるオーラルフレイル概念をもとに、適切な介入により健康な口腔状態に戻ることができるオーラルフレイル第1~第3レベルを「初期レベル」と設定するなど、本研究のブラッシュアップをし、倫理審査委員会に修正申請を提出し承諾を得た。プレテストおよびデルファイ調査を実施するための準備へ着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗状況の理由については、以下のとおりである。 本研究における調査対象者は、全国の摂食嚥下障害看護認定看護師である。その多くが看護師として医療機関や介護施設および在宅ケア分野において、日々看護実践を行っている。新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、調査対象者の日々の業務は逼迫する状況となった。令和4年度はプレテスト後にデルファイ法による本調査を実施する予定であったが、医療機関や介護施設および在宅ケア分野で新型コロナウイルス感染症の対応の最前線を担う摂食嚥下障害看護認定看護師に対し、調査協力を求めることは難しいと判断し、実施を見送った。その間、学会への発表、フィジカルアセスメント項目の再検討、本研究のブラッシュアップや本研究の今後への応用について検討を行った。 第8波の感染者数が減少傾向になった令和5年3月に、再検討したフィジカルアセスメント項目について、フォーカスグループインタビューで項目の重複や網羅性、意味内容のわかりやすさの検討を依頼した摂食嚥下障害看護認定看護師4名へ報告、最終確認をし、プレテストおよび本調査の実施へ向けた準備へと至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年4月~5月にプレテストを実施後、同年7月および9月に全国の摂食嚥下障害看護認定看護師へデルファイ法によるアンケート調査を計2回実施し、オーラルフレイルの初期レベルを評価し早期発見へ導くためのフィジカルアセスメント項目(評価項目)を明らかにする。デルファイ法によるアンケート調査は、インターネット調査を予定している。調査画面はインターネット調査会社へ業務委託する予定であり、画面の見やすさや操作の簡便性について、現在関連業者と打ち合わせを行っている。本研究の成果を論文化し、同年12月に学会誌への論文の投稿を行い、令和5年度内に研究成果の公表を目指す。 本研究で高齢者のオーラルフレイルの初期レベルに対する評価が可能なフィジカルアセスメント項目が明らかになるが、これは高齢者に対して評価したのちに初期レベル(オーラフレイル概念の第1~第3レベル)に該当する高齢者を、歯科専門職や地域の介護予防事業が行う口腔体操などの予防的介入へと橋渡しを行うことで、超高齢社会にとって重要な健康寿命の延伸へとつながると考える。今後は、本研究で明らかになったフィジカルアセスメント項目を基盤として、地域包括ケアセンターや通いの場といった地域在住高齢者が利用する場において、歯科専門職以外の職種が評価可能な、汎用性の高いオーラルフレイルの初期レベルを評価する指標の開発へと研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
令和4年度に実施予定であったデルファイ調査は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う医療機関や介護施設の逼迫した状況から、調査対象者である摂食嚥下障害看護認定看護師と所属機関への負担を考え、調査の実施を見送った。それに伴い、次年度使用額が発生するに至った。 令和5年7月および9月に、デルファイ法によるアンケート調査を全国の摂食嚥下障害看護認定看護師を対象に実施する計画である。アンケート調査はインターネットを用いた調査とし、調査画面の作成およびデータの収集は業者委託とする。研究対象者の所属機関へ研究説明書を郵送し、同意が得られた調査対象者は、研究説明書に記されているQRコードおよびURLからインターネット調査画面へアクセスし、アンケートへの回答を行う。 調査を依頼するための資料の印刷、郵送、インターネット調査画面の作成およびデータの収集は業者委託としており、印刷費、郵送料、業者委託費が発生する。また、デルファイ法1回目および2回目のアンケート調査の結果に基づいて、摂食嚥下障害看護認定看護師4名によりアンケート調査項目の再検討を行うと共に、老年歯学、医学の各専門家からスーパーバイズを受けるため謝礼が必要になる。さらにデータの統計解析のための統計解析ソフト、個人情報保護のための機器としてシュレッターやデータ保存関連機器の購入が必要である。以上の理由により次年度使用額が生じるに至った。
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