2021 Fiscal Year Research-status Report
認知症発症に関連する因子の検討ー特に栄養状態と体組成の観点からー
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20K11070
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
野垣 宏 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10218290)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高齢者 / 認知症 / 栄養状態 / 体組成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、65歳から74歳の高齢者を対象として、食生活の実態と体組成計による栄養状態指標や身体機能、認知機能との関連を明らかにすることを目的とした。 データは男性51人、女性69人、計120人から得られた。男性は全般的に食品摂取量不足でエネルギーやタンパク質の摂取量が不足していた。女性は菓子類等の過剰摂取でエネルギーが充足していた。そのため、男性の低栄養(のおそれ)は握力低下があり、女性は栄養状態が良好でも、個人の栄養摂取状況の不適で脚点が低く身体機能の低下が認められた。年齢とともにフレイルリスクも高まることから、高齢者の健康増進への対策には、男女の食摂取や食習慣の傾向、身体機能にも留意した取り組みの必要性が示唆された。 認知機能に関して、物忘れプログラムの点数は全体平均14.1±1.4点(15点満点)、男性平均13.7±1.9点、女性平均14.4±0.8点で、女性が有意に高かった(P<0.05)。13点以上をアルツハイマー型認知症疑いなし、12点以下を疑いありとすると、男性は疑いなし44人、疑いあり7人、女性は疑いなし67人、疑いあり2人で、男性が疑いありの割合が多かった(P<0.05)。また、アルツハイマー型認知症では、頭頂葉の血流低下による視空間認知機能低下が特徴であることから、図形認識に焦点をあてると、図形満点(2点)でない人が52人(43.3%)であった。本研究で図形認識が満点でない人が約半数いたというのは注目すべき点であるといえる。物忘れプログラムは所要時間1人10分程度であるが、集団検診で多くの人に受けてもらうには時間がかかった。そのため、図形認識のみでもアルツハイマー型認知症疑い早期発見の有用な検査になるのであれば、より簡便で短時間に多数の人が受けられる検査になりうる。 ただし、今回の研究では認知機能と栄養状態や特定の体組成項目との明らかな関連は認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ予定通りの対象者数のデータを収集でき、欠落データもほとんど無かった。統計解析を行ったところ、当初予測していた認知機能と栄養状態の関連は明らかではなかった。しかし図形認識の項目で興味深い所見が得られたため、その観点も加え、学会発表や論文投稿の準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は得られたデータをもとに学会発表や論文投稿を行う予定である。その際、認知機能の評価結果をカテゴリー別に分類し、栄養状態やフレイルの程度との関連を検討する。特に図形認識については、今後の認知症早期発見のための集団検診における重要性を確立すべく詳細に検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症感染拡大の影響で、学会出張や対面での打ち合わせを予定通り実施できず次年度使用額が生じた。2022年度は本研究に関連する最新の情報収集や研究成果発表のための学会出張を行うとともに、学会発表や論文作成のための諸経費を計上する予定である。
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Research Products
(2 results)