2021 Fiscal Year Research-status Report
地域密着型特別養護老人ホームのリテンション・マネジメント尺度開発と職場継続意向
Project/Area Number |
20K11087
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
緒形 明美 中部大学, 生命健康科学部, 講師 (80740696)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 奈佳子 人間環境大学, 看護学部, 教授 (30178032)
小木曽 加奈子 岐阜大学, 医学部, 准教授 (40465860)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人材定着 / 看護職員 / 介護職員 / 質的帰納的分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究目的は,RMS開発の構成概念を検討するために,働く側である地域特養の看護職と介護職が考える人材定着のための課題と魅力ある職場について質的に明らかにすることである. 方法は,愛知県内の看護職と介護職へのフォーカスグループインタビューによる質的記述的研究デザインを用いた.対象施設の選定における基準として,地域特養は,人口密度の差により街や地域の様子が異なり,地域特性に影響を受けて運営状況は異なると考えられたため,大都市型,地方都市型,過疎地域型に区分した.対象施設は,有意抽出した各区分の3施設である.対象者は,看護職と介護職とし,人選は1施設につき可能な限り看護職2名,介護職3名,計5名の構成で,経験年数に偏りが生じないように施設長に依頼した.データ収集期間は2021年8月24日から同年11月15日であった.対象施設の施設長に対し,あらかじめ電話にて内諾を得た後,該当施設に赴き実施した. 分析においては,対象者が語った言葉を逐語録にし,職員を職場に惹きつけ人材定着につながる取り組みについて述べられている箇所に着眼し,質的帰納的に分析した.分析を進めるにあたり,看護管理学や同様の研究をテーマとしている老年看護学研究者と討論しながら実施した.また,分析結果の確実性に努めるため,協力の得られた対象者にコード化の意味内容が妥当であるか,郵送法を用いてメンバーチェッキングを行った. 研究に協力が得られた対象者は看護職5名,介護職8名の計13名であった.性別は女性7名(53.8%),年齢は30歳代が5名(38.5%)で多かった.平均インタビュー時間は57.7±9.0分であった.また,メンバーチェッキングは10名(76.9%)に協力が得られた.分析の結果,地域社会との結びつきを活かした運営,ケアの質を支える取り組み,人的環境の調整,基盤となる施設運営,という構成概念が考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はRMS開発の構成概念を検討するために,文献検討から抽出した構成概念に加え,運営側である施設管理責任者が考える人材定着のための課題と魅力ある職場について質的に明らかにした.RMS開発のために,今年度は対象者を働く側である職員(看護職,介護職)の視点からRMS開発の構成概念を検討した.文献検討のレビューと運営者側,働く側の両者の視点から質的に分析することにより総合的に構成概念の妥当性を考察することができた.これまでの研究結果から導き出された構成概念を基盤とし,次のステップであるRMS開発の要素となる質問項目を作成した. 質問項目作成においては,「職員を職場に惹きつけ,定着につながる取り組み」を問いているかということに着眼して作成した.その後,測定したい構成概念を適切に反映している,質問項目としてわかりやすい,意味内容の重複がない,並列表現・二重否定がない,回答を誘導することがないという質問項目としての適切性を確認し,看護管理学・老年看護学の専門家らと共に検討を重ね,最終的に,変革的なリーダーシップ47項目,構造的なエンパワーメント35項目,規範的な看護および介護実践16項目,新しい知見・改革・改善19項目,小規模の特性に応じた運営29項目の計146項目で構成されるRMSの原案(試作版)となった. RMS試作版は,協力の得られる地域特養の看護職1名と介護職1名の計2 名に対してプレテストを実施し,調査票の不明瞭な点,負担感,所要時間について確認した.実施により,教示文や項目の難しい単語について示唆されたため表現を検討し修正した.また,所要時間は約15分で負担感はないことが確認できた.以上の研究の進捗は,実施時期がやや遅れぎみではあるもののほぼ計画通りである.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,これまでの研究結果に基づき作成したRMS原案(試作版)を東海地方(愛知県,三重県,岐阜県,静岡県)の地域特養265施設(2022年4月時の全施設数)の1施設につき看護職2名,介護職3名とする職員1,325名を対象に量的調査を進める予定である.なお,看護職員を2名に設定する理由は,看護師の配置人数は常勤換算のため,1施設に必ずしも3名配置されているわけではないことによる.この結果をもとに統計的手法を用いて因子分析および共分散構造分析をし,RMS(仮尺度)を開発する予定である.時期は6月を予定としている. その後,RMS(仮尺度)を用いて,全国の地域特養2,347施設(2022年4月時の全施設数)のうち510施設の1施設につき看護職2名,介護職3名の職員2,550名を対象に質問紙調査を実施し,その結果から統計的手法を用い,上記の分析同様,因子分析および共分散構造分析からRMS(本尺度)を開発する.合わせて,職場継続意向に影響するRMSの要因も検討する予定である.時期は9月を予定している.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により,参加を予定していた国内学会がWebでの実施となり,旅費が必要なくなった.この分については,次年度の旅費として使用する予定である.
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