2020 Fiscal Year Research-status Report
Multifaceted study between health condition and agricultural life in elderly dwellers
Project/Area Number |
20K11123
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野瀬 光弘 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携研究員 (00568529)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 健康診断 / 総合機能評価 / 農業生産活動 / 地域の実態把握 / 実務と実践のサポート / 作物のおすそ分け |
Outline of Annual Research Achievements |
当初、調査対象に設定していた高知県土佐町在住の75歳以上の高齢者は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って健康診断が中止となり、現地へ足を運ぶこともできなかった。そこで、京都市内在住で趣味的に農作業を行っている60歳代から90歳代の男性4人に農地の位置、作業の頻度や内容、作目の選定、農作物の取り扱いなどを聞き取りで尋ねた。農地はいずれも地主から借りており、旧来からの人的なネットワークを通じて見つけていた。それぞれ借りている農地は1か所を複数人、2区画を1人、複数区画を1人の場合に分かれ、いずれも周りにサポートしてくれる人が存在していた。雨天の日も含めてほぼ毎日のように農地へ通って作業を進め、中には種子採取や苗作りを行っている人もいた。収穫した農作物は、自家消費とともに親族や友人・知人などへのおすそ分けが習慣化していた。また、土佐町の高齢者の位置づけを把握するために、医療・介護、農業関係の統計情報を収集、整理した。65歳以上の高齢者の比率は、2021年4月時点で47.4%と非常に高く、2015年に人口が4,000人を割り込んでから漸増しつつある。土佐町の平均寿命は、県内で男女とも順位が高かったが、2015年は2010年に比べて女性が微減するといった気がかりな傾向も出ていた。医療費や介護保険料は高齢化率の割には県内の平均的な金額にとどまっており、高齢者に占める要介護者の比率は平均よりやや低い。農家数・人口とも減少傾向にあり、2010年から2015年にかけて落ち込み幅が拡大したが、自給的農家の減り方は緩やかだった。なお、全国的な傾向とは異なり、耕作放棄地を持つ農家数、面積は高知県、土佐町とも横ばいが続いている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究で対象としている高齢者は、新型コロナウイルスに感染した場合に重症化するリスクが高いため、2020年度中は対面での聞き取り調査を実施する状況にならなかった。短期的に状況が改善した時もあったが、所属している研究期間において県境をまたいでの調査自粛が求められ、現地へ足を運ぶ機会を設定することができなかった。代わりに、当初は京都市内において農作業を実施している高齢者を対象に同様の調査を試みようとしたが、医療・保健、農業の関係者へのアプローチに時間がかかった上に、結果をフォローアップする体制づくりへの協力を得るまでに至らなかった。そこで、医療・介護や農業に関する統計資料を収集、整理することで高知県内における土佐町の位置づけをマクロな観点で概括する作業を進めた。また、過去の健康診断の結果を改めて集計し直し、農作業と健康との関連性について解析したところ、男性と女性で関連性の強い項目に違いが認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染状況など次第で状況は変化する可能性はあるが、2021年8月には75歳以上の高齢者を対象とした健康診断が開催される予定となっている。なるべく事前に統計や聞き取りなどで調べたことに基づいて、現地で協力してくれる人に趣旨を説明し、理解してもらえるようにする。まずは少数の高齢者に、子どもの頃の嗜好、農地の広さや場所、農作業の頻度と内容、周辺の環境、作付け作目と投入資材、おすそ分けの作物と相手などを尋ねる。この予備的な調査を踏まえて、健康診断の時期に合わせて町内の複数の地区において高齢者への聞き取りを行い、農業関連の地域活動、慣習的な行事の参加状況や関与の仕方などを通じて周辺環境の実態を把握する。属性や居住地域など農業を取り巻く様々な要素を勘案し、量と質の両面から心身の健康との関連性を多角的に考察する。
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Causes of Carryover |
高知県土佐町で開催予定だった健康診断が新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となったうえに、現地での聞き取り調査ができなくなったため、旅費や人件費・謝金を計上することはなかった。2021年度は8月に健康診断が開かれる予定となっており、聞き取り調査も含めて旅費などを使うよう計画している。
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