2020 Fiscal Year Research-status Report
MCIからの回復を目指したコミュニティ創出およびポピュレーションアプローチの検証
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20K11141
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Research Institution | Gihu University of Medical Science |
Principal Investigator |
薬袋 淳子 岐阜医療科学大学, 看護学部, 教授 (10445124)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 認知機能 / 軽度認知機能障害 / 高齢者 / 住民 / チェックシート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、軽度認知障害(MCI)からの回復を目指したコミュニティ創出およびポピュレーションアプローチの検証である。 1年目の2020年度は、①チェック表付きリーフレットを作成。②ベースライン調査として、対象者のMCI有無を確認後に介入する計画であった。予定通り、チェックシートを作成し、“運動”“食生活”“知的活動”“役割創出”から構成し、自由記載欄も設けた。MCI評価は、"Cat Smart"を使用し、「総合得点」「記憶力」「判断力」「視空間認識」「注意力」「見当識」「行動力」について各100点満点で評価した。 2時点の分析ができた第一グループ65名については、ベースライン時と2カ月後の平均得点を対応のあるt検定を用いて比較した(有意水準は0.05)。結果、男性17名、女性48名、平均年齢は76.4±4.9歳。ベースライン時検査は、総合得点89.5±1.0、記憶力91.7±0.9、判断力85.4±1.6、視空間認識78.3±2.1、注意力79.4±1.7、見当識89.4±1.4、行動力83.8±1.2点であった。2回目の検査結果は、総合得点92.1±0.8、記憶力93.1±0.6、判断力88.3±1.2、視空間認識80.3±1.8、注意力83.7±1.5、見当識90.6±1.1、行動力87.5±1.1点であった。t検定の結果、総合得点(p=0.008)、判断力(p =0.038)、注意力(p =0.003)、行動力(p =0.001)が有意に上昇していた。チェックシート実施項目は、ラジオ体操、握力体操、昨日の3行日記、1日3食、買い物、緑茶を飲むことが良い影響を与えていた。 本研究参加高齢者は、概ね認知機能が良好であったが、チェックシートを毎日使用することで1日の生活ですべきことが意識付けされ、認知機能に良い影響を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大学の地域貢献ルーム活用と、地域包括支援センターに出向いての研究活動を予定していた。通常、毎月1回開催される講座に参加される住民と地域包括支援センターを利用している住民を対象にしているが、コロナ感染症拡大に伴い、緊急事態宣言が出され、予定通りに活動できず、計画通りの住民を集めることができなかった。 しかし、一回の人数を少なくして実施回数を多くし、現時点での対象者は150名で、予定の1/4は達成できた。研究参加希望者は増えており、100名が待っている状況にある。コロナ感染症の状況に応じ、今後徐々に活動を進めていく予定である。 高齢者1人の検査時間が10-15分かかるため、予想以上にスタッフ数を必要とすることもあり、1年間のコホートに時間がかかることが予測できる。よって、計画より対象者は減ることが予想されるが、観察研究として分析に問題ない数を得ることはできると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる2021年度は、①対象者の1年後MCI有無を確認(8~9月)。②プログラム実施成果を統計的に分析しリーフレット再作成(10~12月)。③対象者の中から市民サポーター募り養成(1~3月)。3年目の2022年度は、①市民サポーターによる各地域におけるプログラム介入(4~翌年3月)。4年目の2023年度は、市民サポーターによる各地域におけるプログラム介入評価(4~翌年3月)。5年目の2024年度は、市民サポーターによる介入効果の統計的分析し、プログラムを完成させる。なお、プログラム実践の効果を検証するにあたって、交絡因子と成り得る属性などは、質問紙調査をおこなう。以上を計画しているが、コロナ感染症が完全に収束するまでは、慎重に活動したい。よって、市民サポーターの養成は、1年遅れることが予想される。 また、このようなコロナ感染症を考えると、検査と介入方法をリモートで実施できることが必要と考え、更に研究資金を得て、電素媒体で実施できるプログラムも検討している。 半年間、検査と介入を行い、高齢者の取り組み姿勢が非常に前向きであることと、高齢者の口コミで研究参加希望者が増えていることを受け、本研究の必要性を実感している。このような災禍は、今後も起こりうることを考え、検査と介入方法の方向性の転換も視野に入れて研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
計画では、認知機能を聞き取りで実施する予定であったが、コロナ禍を考え、タッチパネル式のソフトを購入し実施することに変更した。また、対象者との連絡、検査、介入とその間のサポートといった作業を担当するための人件費を必要とし、年度の所要額としては、ほぼ計画通りの使用であった。
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