2022 Fiscal Year Annual Research Report
手指に体性感覚情報を付加した歩行の動的安定化機序の解明と高齢者の転倒予防への応用
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20K11155
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高橋 真 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (50435690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梁 楠 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70512515)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Light touch / 動的安定性 / 振動刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
歩行中の動的安定化を図る方法として,指先で平行棒などに触れる(Light touch: LT),あるいは手で紐の先の重りを引きずる(Haptic anchors: HA)ことによって体性感覚情報を付加する試みがなされている。昨年度までに下方視野を制限した場合,トレッドミル歩行中の動的安定性の指標である単脚支持期における身体重心と支持基底面との距離(安定性限界)の変動が増大するが,LTによって抑制できることを明らかにした。さらに,今年度は腱振動刺激によって生じた運動錯覚を手指からの体性感覚情報によって修正できるかについて検討した。健常若年者を対象に,35秒間のその場足踏みを通常(N)条件,振動(V)条件,Anchor(HA)条件,Anchor+振動(HAV)条件の4条件で実施した。振動刺激は左側頸部後面に与えた。Anchorは125gの鉛玉を入れた布製の小袋と紐で構成され,両手で紐を持ち,小袋を地面に置き,紐を張った状態を保たせた。3次元動作解析システムを用いて頭部の位置を記録した。0秒時点と30秒時点の頭部位置から,総移動距離を算出した。その結果,V条件では他の3つの条件と比較して有意に総移動距離が増加した。頸部後面への振動は頭部に対する体幹の背側への動きを錯覚させる。V条件ではこの歪んだ内部表現の中で動的安定性を補償するために,前方への変位が生じたと考えられる。HAV条件ではAnchorから手指で紐の張力を感じとることで,体性感覚情報が付加され,頸部振動によって歪んだ内部表現を修正でき,その場足踏み中の前後方向変位を抑制できたと考えられる。以上,これまでの研究成果より,手指からの体性感覚情報を付加することで,歩行中の動的安定性や空間認知が向上し,有効な転倒予防策に繋がることが示唆された。
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Research Products
(6 results)