2021 Fiscal Year Research-status Report
An exploration of the role of lymphatic vessels and its mechanism in promoting the recovery of muscle damage following effective stretching stimulation
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20K11156
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
紀 瑞成 大分大学, 福祉健康科学部, 准教授 (60305034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河上 敬介 大分大学, 福祉健康科学部, 教授 (60195047)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 筋損傷 / リンパ管新生 / 内皮細胞増殖因子(VEGF-C/-D) / 免疫組織化学 / 分子生物学 / 伸張刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
リンパ管系は、筋損傷後に炎症性細胞浸潤などにより分解された筋線維のタンパク質や過剰な筋組織間質液を取り込むために、または筋組織の再生治癒過程において重要な役割を担う可能性がある。そこで当研究グループでは、筋損傷組織の回復促進応答に関わるリンパ管の機能・形態的変化とそのメカニズムの解明に取り組んでいる。前年度に引き続き、伸張性収縮により全筋線維数のうち約17%の割合で筋線維が損傷する、再現性の高いマウス筋損傷モデルが作成できることを確認した。損傷2日後、さらに4日と7日後の前脛骨筋を採取し、リンパ管内皮細胞マーカー(LYVE-1、Podoplanin抗体)を用いた免疫組織学的観察によるリンパ管の分布、面積及び密度などの検証を行った。また、リンパ管新生の指標として内皮細胞増殖因子(VEGF-C/-D)とそれらの受容体(VEGFR-3)などをReal-Time PCR法により解析した。 その結果、骨格筋損傷2日後では、筋組織への炎症性細胞の浸潤、筋線維の分解および筋線維間質液の増加をうかがわせる所見が認められ、リンパ管面積の増加傾向が確認された。筋損傷4日後では、リンパ管の数・面積が他群に比べて増加し、VEGF-C/-D、VEGFR-3のmRNA発現量が上昇した。なお、筋損傷4日までは、マクロファージの浸潤や炎症性サイトカインTNF-α、IL-1β発現量の上昇傾向も認められた。7日後では損傷筋組織内にある、CD31陽性毛細血管の数が増加する傾向が見られた。さらに、再生筋線維の指標である中心核を持つ筋線維が数多く認められたとともに、筋機能(最大足関節背屈トルク)回復の兆候が認められた。これらの結果は、筋損傷による炎症反応に伴う筋内リンパ管の組織学的・分子生物学的応答が、毛細血管の形態学的変化や筋機能・構造の回復よりも比較的早期に起こることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の目標は、筋損傷組織の炎症反応や回復過程に関わるリンパ管の形態応答や役割を明らかにし、そのメカニズムを解明することである。そのために、伸張性収縮により筋損傷マウスモデルを作製し、4群(損傷2日後、4日後、7日後、および未損傷の対照群)を分けてVEGF-C/VEGFR-3系の活性制御に着目して検討した。まず、リンパ管内皮細胞の特異的マーカーLYVE-1、血管内皮細胞のマーカーCD31を用いて、免疫組織化学的に筋内毛細リンパ管及び毛細血管の定量分析により、筋損傷からの回復における筋組織内リンパ管系分布・機能との関係性を明らかにした。次に、内皮細胞増殖因子VEGF-C/-DなどをReal-Time PCR法による解析からは、筋損傷組織にはリンパ管新生が促進され、損傷筋の治癒にも関与することが明らかとなった。さらに、本研究にはマクロファージや炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β)は損傷組織の回復過程に重要な役割を果たすことが示唆されたが、筋衛星細胞の増殖・分化および骨格筋再生に焦点をあて解析し、作用機序を明確にする必要がある。以上のことより、本課題はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、筋損傷組織におけるリンパ管系分布・機能との関係性を明らかにし、その早期回復を促進する最適な伸張刺激方法を検討することである。損傷筋やリンパ管の組織化学的・分子生物学的変化の研究結果に加えて、令和4年度には当初の計画に沿って研究を推進し、以下の課題に取り組む予定である。 1)損傷筋組織におけるリンパ管新生のメカニズムについては、マクロファージ特異的抗体(CD206、F4/80)を用いた免疫組織学的、Real-Time PCR法を用いた分子生物学的解析により、マクロファージや炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-1β,TLR-4,NF-κB)とリンパ管内皮細胞増殖因子との関連性を検討する。 2)筋損傷組織の回復に関わる内皮細胞シグナル分子の促進や抑制により起こる現象を基に、リンパ管系の役割を解明する。すなわち、損傷筋再生におけるリンパ管系の形態応答およびそのメカニズムを明らかにする。特に、リンパ管新生を抑制するMAZ51等の阻害薬を用いた実験で検証する。また、抗炎症性サイトカインの投与による影響も視野に入れて検討する。筋内リンパ管の増殖や増殖抑制に関わるメカニズムが判明することにより、炎症性筋疾患の治療に有効な治療薬の創造に寄与できると考える。 3)損傷筋伸張刺激の方法や量と筋の再生促進との関係を、明らかになったリンパ管新生に関わるシグナル分子を基に解明する。
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Causes of Carryover |
試薬の販売価格は安くなったため、研究費に40円の未使用額が生じた。次年度の研究試薬購入に使用する。
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Research Products
(7 results)