2021 Fiscal Year Research-status Report
小型無線慣性センサーを活用した歩行インシデントの客観的分析法の考案
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20K11172
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
大塚 圭 藤田医科大学, 保健学研究科, 准教授 (60460573)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 文浩 藤田医科大学, 保健学研究科, 講師 (30646998)
土山 和大 藤田医科大学, 保健衛生学部, 助教 (60780624)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小型無線慣性センサー / 歩数検出 / 転倒・インシデント判定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、臨床で活用できる歩行の成否に関するインシデント分析システムを開発する一環として、小型無線慣性センサーを用いて、歩行の転倒・インシデント出現率の分析手法を開発することである。この分析手法には、転倒とインシデントの判定と出現率の算出に用いる歩数検出が必要となる。令和2年の研究結果によって、両大腿部に慣性センサーを貼着したデータで異常歩行の歩数も精度高く検出するアルゴリズム作成することができた。また、脳卒中片麻痺者に頻出する転倒とインシデントの5つの要因(爪先離地不全、遊脚保持困難、立脚二重ステップ、立脚期にふらつき、膝折れ)も明らかに出来た。これらの知見をふまえ、令和3年度では、転倒とインシデントを検出するアルゴリズムを作成、検討することを目的として実験を行った。実験では、対象者として健常者に上記の5つの要因が起因となる歩行中の転倒・インシデントを模擬的に再現させ、データ計測を行った。また、転倒とインシデントを判定することを目的として、第7頚椎棘突起と仙骨後面に貼着した慣性センサーのデータも記録した。計測中は、前方からビデオカメラで撮影し、視診で歩数を計測した。 取得したデータから歩数を算出した結果、通常の歩行中の歩数検出は、ほぼ視診に実歩数を一致していたが、転倒やインシデントを再現するとわずかな誤差が認められた。これは、転倒やインシデントを再現した際に、視診では歩とは判定しない、立ち直り反応として出現するわずかな股関節の屈曲運動や爪先離地不全の際に、股関節は屈曲するものの離地はしない動作を歩として判定してしまったことが原因と考えられた。転倒とインシデントの判定に関しては、試験的に作成したアルゴリズムによって、転倒は100%判定可能であったが、インシデントの判定は、20%未満であったため、アルゴリズム改善の必要性とその課題が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従い、対象者として健常者に上記の5つの要因が起因となる歩行中の転倒・インシデントを模擬的に再現させ、データ計測し、歩数検出と転倒およびインシデントの判定に関するアルゴリズムの検討することができた。慣性センサーによる歩数検出では、視診では歩数と判定しない転倒やインシデント時に生じるわずかな股関節の動作を歩と判定する誤差が認められ、本研究で構想している分析システムにおける歩数検出の課題を明らかにすることができた。また、転倒とインシデントの判定のために、慣性センサーから得られる鉛直成分の加速度データを用いて、試験的にアルゴリズムを作成し、検証することができた。その結果、転倒に関しては、100%判定できたことは、本研究において有用な知見であった。しかし、インシデントの判定は20%未満に留まり、改善の必要性を示唆するものであった。判定の精度が低下した原因は、今回インシデントを再現した5つの要因のそれぞれ運動学的特徴が異なっていたことと、軽度の状態から転倒に至る直前のような状態といった重症度の程度が異なるインシデントに、今回作成したアルゴリズムが適応しきれていなかったと考えられる。計画では、アルゴリズムのインシデント判定の精度が低かったことと、新型コロナウィルス感染症のリスク対策を優先させるため、患者のデータ計測を見送った。令和3年度の研究結果によって、インシデント判定のアルゴリズム改善の課題が明確になったことは、本研究において意義あるものになった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、まず、判定の精度が低かったインシデント判定のアルゴリズムを改善させ、令和3年度に計測した健常者のデータで検証することを目的としている。その後、患者の計測を実施し、臨床応用のフェーズに移行する予定である。臨床応用では、歩数検出や転倒とインシデント判定のアルゴリズムの検証する予定である。しかし、患者の転倒やインシデントは、模擬的に再現する健常者とは異なり、偶発的に発生するため、サンプリングが難航する可能性がある。従って、実験では平地自由歩行を想定していたが、高速度も条件に追加し、計測課題となる歩行の難易度を上げ、計測条件に追加することも検討していく必要があると考えている。 令和4年度の上半期までにデータ解析を終え、アルゴリズムを完成させ、解析手法を確立させる予定である。さらに年度末までに研究成果の論文にまとめることを目指したい。
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Causes of Carryover |
令和3年度に情報収集を目的として国際学術大会にオンライン形式にて参加を予定し、参加費として計上していたが、当該研究の遂行にあたり参考となる関連するプログラムが予定されなかったため、参加を見送った。繰越分の研究費は、令和4年度は、令和3年度にて課題となったアルゴリズム改善の実験に関する備品等の物品費ならび研究成果の論文化に要する英文校正料に使用する予定である。
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