2020 Fiscal Year Research-status Report
慢性閉塞性肺疾患の認知機能低下における脳血管動脈硬化の役割
Project/Area Number |
20K11186
|
Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
岩本 えりか 札幌医科大学, 保健医療学部, 講師 (40632782)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 慢性閉塞性肺疾患 / 呼吸筋疲労 / 脳血管機能 / 動的肺過膨張 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脳血管の動脈硬化を含めた網羅的な脳循環機能の評価を行い、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の認知機能低下に関与する脳循環機能の変化を解明すること、また、呼吸筋疲労が脳循環機能の変化を介して認知機能低下に関与するかを明らかにすることを目的としている。本研究実施においては、外来COPD患者を被験者として用いる予定であったが、COPD患者はCOVID-19に対してより重症化のリスクが高い患者であることから、本年度はCOPD患者を用いた実験を行うことはできなかった。そのため、本研究のメインテーマである「呼吸機能が脳血管および認知機能に与える影響」を明らかにするために健康成人を被験者として用いた実験のための倫理審査申請書類の作成・変更および予備実験を実施した。
具体的には、健康成人に対して安静時および運動時に段階的な吸気抵抗を負荷し、呼吸筋負荷をかけた際の介入中の脳血流(中大脳動脈の血流速度、内頸動脈の血流速度・血管径)、全身の循環機能(連続指尖血圧、心拍数、心電図)、介入前後の脳血管の内皮機能(内頸動脈の高炭酸を用いた血管拡張反応)にどのような影響を与えるかの予備実験を実施した。また、健康成人に対して、軽度の呼気抵抗と呼吸コントロールを行うことにより、安静時および運動時に動的肺過膨張を引き起こし、脳血流(中大脳動脈の血流速度、内頸動脈の血流速度・血管径)、全身の循環機能(連続指尖血圧、心拍数、心電図)に与える影響を検討した。これらの予備実験結果を活かし、今後は健康成人における本実験を進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対して、脳血管の動脈硬化を含めた網羅的な脳循環機能の評価を行い、COPD患者の認知機能低下に関与する脳循環機能の変化を解明する予定であった。また、関連するクリニックに通っている外来のCOPD患者を用いる予定であった。しかし、本研究計画申請後にCOVID-19が日本国内でも蔓延し、本年度は北海道内のCOVID-19によりCOPD患者のリクルートが非常に困難な状況になった。COPD患者はCOVID-19に対してより重症化のリスクが高い患者であることから、今後のCOPD患者の研究被験者としてのリクルートについては感染状況を見ながら、主治医と相談の上、実施していく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
COPD患者における呼吸筋疲労や動的肺過膨張が、脳機能や脳血管調節に与える影響を調べる上で、健常者における呼吸筋負荷増加や、動的肺過膨張の誘発は非常に有用なデータとなりうる。COPD患者では呼吸筋負荷や動的肺過膨張以外にも低酸素性肺血管収縮などの病態が複雑に絡み合っている。それに対して、健常者で呼吸筋疲労や動的肺過膨張を誘発させることは、肺力学的にこれらが純粋に脳血流や脳血管調節に影響を調べるために重要である。そのため、今後においてもCOPD患者のリクルートをCOVID-19の状況を見ながら行うとともに、健康成人における実験を並行して行っていく予定である。
具体的には、健康成人に対して安静時および運動時に段階的な吸気抵抗を負荷し、呼吸筋負荷をかけた際に脳循環機能、全身の呼吸循環機能、脳活動にどのような影響を与えるかを検討していく。また、健康成人に対して、軽度の呼気抵抗と呼吸コントロールを行うことにより、安静時および運動時に動的肺過膨張を引き起こし、脳循環機能に与える影響を明らかにしていく。これらの健康成人における研究結果は、本研究における呼吸機能低下と脳循環機能の低下の生理学的な関連を調べる上で非常に有用なデータとなる。またこれらの実験で得られた知見を今後、COPD患者における呼吸機能と脳循環調節測定へ生かしていく予定である。
|
Causes of Carryover |
本研究実施においては、外来COPD患者を被験者として用いる予定であったが、COPD患者はCOVID-19に対してより重症化のリスクが高い患者であることから、本年度はCOPD患者を用いた実験を行うことはできなかった。そのため、研究実施が遅れ、物品費用、人件費について次年度以降に使用することとした。またCOVID-19の影響により旅費の執行を行うことができなかった。次年度以降も旅費の執行については感染状況をみながら検討することとする。
|