2020 Fiscal Year Research-status Report
高齢期の認知機能におけるチロシン脱リン酸化酵素SHP-1の機能解析
Project/Area Number |
20K11222
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
田中 貴士 金沢医科大学, 医学部, 講師 (30734694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 伸郎 金沢医科大学, 医学部, 教授 (10152729)
上野 将紀 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40435631)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイドβ / チロシン脱リン酸化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症(特にアルツハイマー病)に対する有効な治療法は未だ確立されていない。認知症を改善させるためには、脳に蓄積したアミロイドβなどの代謝廃棄物の除去を促すこと、海馬における神経新生を増加させることが重要である。本研究で着目しているチロシン脱リン酸化酵素(SHP-1)は、代謝廃棄物の除去に大きく関わるミクログリアの貪食能や神経新生を抑制すると報告されることから、SHP-1を減少させることがアルツハイマー病の予防・改善に有効であるのではないかと仮説を立て、研究を進めている。 本研究で用いているアルツハイマー病を発症するマウスは、成長とともに脳内にアミロイドβの顕著な蓄積がみられ、徐々に認知機能の低下がみられるマウスである。2020年度は、このアルツハイマー病マウスとSHP-1の欠損マウスを掛け合わせることで、SHP-1が減少したアルツハイマー病マウスを作製し、出生後は順調に飼育できることを確認した。20月齢に達したSHP-1欠損のアルツハイマー病マウスにおいて、記憶を中心とした認知機能や脳内のアミロイドβの蓄積を解析した結果、脳におけるアミロイドβの蓄積が緩和され、認知機能の低下が改善されることが徐々に明らかになってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SHP-1欠損のアルツハイマー病マウスにおける記憶能や脳内のアミロイドβの蓄積などの解析は、概ね順調に進行している。しかし、SHP-1欠損のアルツハイマー病マウスは平均出生数よりも少なく生まれる傾向があるため、海馬における神経新生を評価するためのマウスが不足しており、現在解析を進めているが予定よりもやや進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方策としては、まずはSHP-1欠損のアルツハイマー病マウスにおいて、海馬における神経新生が増加するのかについて評価する。続いて、治療薬への発展を見据えるために、SHP-1の抑制剤を用いてアルツハイマー病マウスの認知機能が改善されるか否かについて解析を進めていく。さらに、SHP-1の抑制が脳内のアミロイドβの除去や海馬の神経新生を促進できることが明らかになれば、SHP-1を減少できる身体運動によるアルツハイマー病への効果の解析に取り組み、手頃で安価な認知症の予防・改善につながるデータを提示していく。
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