2022 Fiscal Year Research-status Report
発達障害における運動の不器用さへの身体特異性注意からのアプローチ
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20K11229
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
大内田 裕 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (80510578)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 発達障害 / 身体特異性注意 / 身体図式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多くの発達障害児にみられる運動の不器用さと、脳における自己の身体情報である自己身体像との関係性を明らかにすることを目的としている。多くの発達障害児では,認知・精神機能の障害とともに,運動の不器用さが認められる. この運動の不器用さは,幅広い身体機能で認められることからも,脳内の自己身体モデルに問題があることが示唆されてきた.しかし,この運動の不器用さは不明な点が多く,さらに,他の症状に与える影響も明らかではない. 申請者は,この自己身体モデルの定量的評価の研究をおこない,身体特異性注意という潜在的に身体に向けられる注意が自己身体モデルを反映していることを見出した.そこで,発達障害児において,身体特異性注意と運動の不器用さや他の障害との関連性を調べ,発達障害における脳内身体モデルの果たす役割を明らかにすることを目的とする.本年度は、昨年度に引き続き脳卒中後の運動麻痺患者や幻肢痛を有する四肢切断患者という成人において開発を行ってきた身体特異性注意の計測手法を、発達・知的障害を有する小児においても実施が可能とする改良を行うことを目的とした。発達・知的障害児の計測時に見られる困難な点は、①実験中の姿勢の維持が困難点と注意の易転導性が見られる点であり、これら2つの点が身体特異性注意の計測において非常に大きな制限となっている。成人の片麻痺患者や四肢切断患者において、一側上肢を眼前の机上に置き、視覚情報を遮断するために手を置いている机の上に遮蔽板を置き、その遮蔽板の上に天井からつるされたプロジェクターより視覚刺激を投射した。しかし、この方法では、発達・知的障害児の多くはそのような姿勢を維持することが困難であることから、課題を変更し一般にnearby-hand効果を計測する実験方法に変更した。また、②に対しては用いる視覚刺激をアニメのキャラクターを用いるなどの工夫を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
発達障害・知的障害は、非常に個人差が大きく実験セットアップをかなり個別に最適化しなければ、実験を最後まで完遂することが難しい。そのため、視覚刺激 などを個人ごとに変えたり、実験姿勢を座位や立位で行うなど変化させて、より多くの児童や年齢範囲で計測可能にする試行を行っている。また、視覚刺激や姿 勢の違いによる実験結果への影響を調べるため、当初予定していなかった健常成人や知的支援学校高等部の生徒においても計測を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
支援学校中学部で、八割以上の児童で身体特異性注意を計測できるようことを目指す。また、小学部においても計測可能となる実験セットアップの構築を目指す。特に、児童の実験に対する注意度を上げるためにおこなっているアニメキャラクターを用いた視覚刺激は、実験参加児童により異なることから、この視覚刺激の違いが身体特異性注意にどのような影響を与えているのかを計測する。また、小学部夜中学部の発達・知的障害児の中には、アニメキャラの好悪が非常に大きく、好きなキャラクターの場合とそうでないキャラクターの場合で、刺激検出反応時間が大きく変わる。このため、高等部の生徒においても実験計測を行うことを計画する。
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Causes of Carryover |
支援学校におけるcovid-19感染症対策による様々な制限により実験計測が十分に行えず、学会発表や論文執筆にたるデータが計測できなかった。そのため、研究期間をもう一年延長しデータ計測を行うこととした。
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Research Products
(1 results)