脳波による遷延性意識障害者のデフォールト・モード・ネットワークの解明

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 20K11237
• Research Institution: Osaka Prefecture University
• Principal Investigator: 大西 久男 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 准教授 (80194231)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 石井 良平 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 教授 (40372619)
• Project Period (FY): 2020-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 遷延性意識障害 / 注意機能 / D-CAT / 意識障害スケール / 脳波

Outline of Annual Research Achievements

目的】遷延性意識障害は、重度の後天性脳損傷により慢性の意識障害を呈する持続性の植物状態であるが、この状態の患者群は施設あるいは在宅で絶え間なく最重度の介護を必要とし、介護者の身体的・精神的・経済的・社会的負担は非常に大きい。その背景の１つには、遷延性意識障害者からの反応の無さ（乏しさ）、すなわち意思疎通ができないことが挙げられており、遷延性意識障害者に対してより選択的で効率的な脳機能リハビリテーションへ応用するために、日常臨床において幅広く普及し、安価で簡便、非侵襲である脳波検査を用いて、安静時の脳機能をDMNの枠組みで捉え、脳活動のネットワークの障害として定量的に評価することを目的とする。
【研究実施計画】 本研究は３か年計画である。基本的には、遷延性意識障害者の「意識状態」の評価と脳波解析が並行して行われ、最終的には意識状態と安静時脳波の間の検討が行われる。
①慢性期の意識障害者の評価スケールの再検討と②研究協力者（介護家族）を幅広く募り、脳波データ利用についての承諾を得て、③個々人の脳波について、eLORETA-ICA解析を行い、安静時大脳皮質皮質下回路についてデータベース化し、④健常成人のデータベースとの比較・検討を意識状態との関連で行うこと、が基本的な計画である。
※COVID-19の影響で脳波データの収集が滞っていたため、D-CAT注意機能スクリーニング検査を用い、健常者の注意機能の標準化の研究を補填し、高校生・中学生のデータ収集を行う。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

・慢性期の意識障害スケールの再検討については、ほぼ終了している。
・研究協力者の依頼に関しては、コロナ禍の影響で、全国・地方ブロック会ともに、すべての家族会活動（総会や学習会）が停止し、全体に対する説明の機会が全く取れなかった。そのため、個人的にご家族とメールでの連絡をとることで、少しずつ知ってもらう機会を増やしていった。2020年度末からは、オンラインによる家族会活動が少しずつ行われるようにもなり、参加可能な集まりには参加させていただき、概要の説明を行うようにしている（2021年度も対面での会合はゼロであった）。少しずつではあるが、「協力する」という方々からの連絡も入ってきているが、2021年度終了時には10名にとどまっている。。
・上記のような現状の中、健常者・児の「注意・意識」の評価をD-CAT注意機能スクリーニング検査を用い、中学生・高校生に実施（あるいは依頼）を行い、検査済み結果については分析の後、現在「人間環境学研究」に投稿中である。

Strategy for Future Research Activity

現在、承諾の得られた方々からの脳波データの解析中である。
個々のデータについては、一定の結果はでているが、データ数が少ないため、それらが何を意味しているのかまでの考察には至っていない。しかしながら、研究協力者が増えてきている点と、解析を実際に始めていることより、こののち、半年くらいの間に、50名（件）程度まで解析が進むことが期待され、データベース化に至ると考えている。
（＊協力者の方からの脳波データの受け渡しを円滑にしていく必要は感じている）

Causes of Carryover

2020年度に引き続き2021年度も、コロナ禍のため対面での家族会活動（総会や学習会）のすべてが中止されたこと、および関連学会もオンライン開催になったことから、旅費枠を使用することがなかったため、このような結果になった。2022年度当初も家族会活動はオンライン開催が予定されているが、学会については解除されてきている。ある程度同様の事が予測されるが、状況を見ながら、計画的な使用をしていきたい。