2020 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中後疼痛の神経リハビリテーション予後を推定するモデルの構築
Project/Area Number |
20K11249
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
大住 倫弘 畿央大学, 健康科学部, 准教授 (70742485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冬木 正紀 畿央大学, 健康科学部, 准教授 (40564787)
住谷 昌彦 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80420420)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳卒中後疼痛 / 神経リハビリテーション / 予後予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
“脳卒中後疼痛(post stroke pain)”は,脳卒中後に11-55%の頻度で発症し,脳卒中患者の25%が痛みによってリハビリを妨げられているため,患者のADL改善の阻害因子として重大な課題である.脳卒中後疼痛は,従来リハビリ(例:筋力トレーニング,ストレッチ)では対応しきれないことから,近年では神経リハビリの開発研究が盛んに行われている.しかしながら,“どのような”病態特性(神経生理学的および運動学的な異常)が神経リハビリの予後を左右するかは明らかになっていない.そのため,それぞれの症例に合った神経リハビリを提供できていない現状がある.そこで,本研究では,脳卒中後疼痛患者における病態特性を疼痛アンケート,定量的感覚検査,脳波や筋電図などの生体信号データを活用して類型化した上で,神経リハビリの予後がそれらの病態特性に依存するのかを明らかにすることを目的としている.そして,そのデータを機械学習を用いて分析し,その結果に基づいて『痛みの性質データからリハビリ予後を推定できるシステム』を構築する.これをリハビリ現場で実際に運用して,神経リハビリ選択の意思決定における有用性をパイロット的に検証する.これらの研究によって,病態メカニズムに基づく予後推定と神経リハビリの選択・実施における意思決定の支援ツールが確立されると期待している.加えて,このような支援ツールはリハビリ専門職-患者とのコミュニケーションを円滑にすると考え,そのような人間関係がリハビリ効果へ良い影響を及ぼすのかどうかも検証していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在では,脳卒中後疼痛を有する症例45名の痛みの性質データを記録しており,そのデータに基づいて脳卒中後疼痛患者を3つのグループに分けることができている.中でも,外部刺激によって痛みが誘発されるタイプの症例は,運動機能障害が強い傾向が分かってきており,障害されている運動機能が改善していくにしたがって痛みが改善していくという傾向も確認できている.これらの症例に定量的感覚検査を実施していく予定であったが,予想以上に患者の負担が大きく,その手続きを簡略化する必要があった.そのため,我々は約20分間で実施できる簡易的量的感覚検査を整備し,現在では6名の脳卒中後疼痛を有する症例のデータを記録できている.このデータによってアンケートでは網羅できない点も評価することができるため,病態の類型化がさらに洗練化されていくと考えている.また,脳波や筋電図などの生体信号データを記録するための機器一式を整備することができており,体性感覚誘発電位などの神経障害性疼痛において重要なデータを記録する環境は整っているものの,症例での計測はまだ実施できていない.これについても,症例の負担が大きいことから症例リクルートが滞っており現状にあるため,もう少し簡略化した生体信号計測を考案していく必要がある. 現在までに記録できている痛みの性質データ(アンケートデータ)に基づいた『痛みの性質データからリハビリ予後を推定できるシステム』のプロトタイプは既に作成できており,脳卒中後疼痛患者における3ヵ月後の痛みを人工知能で予測することができる体制は整っている.
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Strategy for Future Research Activity |
アンケートによって評価できる痛みの性質データは継続的に記録していく予定である.これに加えて,簡易化した定量的感覚検査データを蓄積していき,予後予測システムの洗練化を目指す.その洗練化された予後予測システムをリハビリ現場で実際に運用して,神経リハビリ選択の意思決定における有用性をパイロット的に検証する.加えて,このような支援ツールはリハビリ専門職-患者とのコミュニケーションを円滑にすると考え,そのような人間関係がリハビリ効果へ良い影響を及ぼすのかどうかも検証していく予定である ただし,アンケートなどの表面的な症状から予後をいくら予測できても,“なぜ”そのように予測されるのかついての理由は不明のままである.そのため,その予後を裏付ける病態メカニズムを解明するためにも,脳波や筋電図などの生体信号データを記録していくことが今後の課題である.この点については,正確さと簡便さを兼ね備えた計測方法を模索している段階であるため,それが整い次第,臨床現場で計測をスタートする予定である.現在までに協力して頂いている臨床機関に加えて,そのような生体信号データの記録にも協力してもらえそうな協力機関を募り,計測環境を整備していく予定である.もし,臨床現場での計測環境を整えることができなかった場合の案として,脳損傷部位の分析を検討している.MRI画像から損傷部位を分析し,それと臨床症状および予後を関連づけることによって,脳卒中後疼痛の予後が不良な症状だけでなく,その脳メカニズムが考察できると考えている.
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Causes of Carryover |
購入する予定であった機器の納品が予想以上に遅くなった.次年度に納品される予定であるため,その支払いに使用する予定である.
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