2021 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中後疼痛の神経リハビリテーション予後を推定するモデルの構築
Project/Area Number |
20K11249
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
大住 倫弘 畿央大学, 健康科学部, 准教授 (70742485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冬木 正紀 畿央大学, 健康科学部, 准教授 (40564787)
住谷 昌彦 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80420420)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳卒中後疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,脳卒中後疼痛のリハビリ予後を決定づける病態特性を神経生理学データと痛みの性質データを活用した機械学習で明らかにして,「病態メカニズムに基づく精密なリハビリ予後推定システム」を構築することを目的としている.これを達成するために,まずは,臨床現場で活用されている痛みの性質アンケートと,定量的感覚検査(Quantitative Sensory Test: QST)を脳卒中後疼痛を有する患者に実施し,その特徴から脳卒中後疼痛の予後を推定できるかを検証している.現在のところでは,約70名の脳卒中後疼痛患者の痛みの性質アンケートの結果から,対象となった症例が3ヶ月後に「痛みが悪化する」「痛みが持続する」「痛みが緩解する」という予測ができるようになってきている.この研究成果は第20回日本神経理学療法学会学術大会で演題発表する予定である.加えて,定量的感覚検査(QST)をリハビリテーション診療内でも15分間で簡易に実施できるように変更した評価キットを整備でき,これについては現在のところ約20名の脳卒中後患者に実施できており,その結果から痛みが緩解しにくい症例の体性感覚特性を明らかにできつつある.この研究成果についても第20回日本神経理学療法学会学術大会で演題発表する予定である.また,当初の研究計画にある神経生理学的データの集積については若干遅れているが,痛みを有する症例に特化した体性感覚誘発電位を数電極だけでリアルタイムに記録する環境は整備できてきているので,今後はそれを症例にも実施していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在では,約70名の痛みの性質アンケート結果から,“しぼりあげられる”あるいは“圧迫されるような”痛み,いわゆる深部痛を有する脳卒中後疼痛は,痛みの予後が良好であることが明らかになった.さらに,これらの症例は関節運動時の痛みがあり,肩の亜脱臼が多いことから,運動麻痺による影響で筋骨格系の痛みが生じている場合にはリハビリテーションによって痛みが解決されやすいことが明らかになった.これとは対照的に,“冷たいものを触っただけで痛みがつよくなる”という症状をもつ症例では,リハビリテーションを進めても痛みが解決しなことが明らかになった.このアンケートデータをつかった研究についてはおおむね順調に進めているため,引き続き,症例数を増やして検証していく.また,定量的感覚検査(Quantitative Sensory Test: QST)については,リハビリテーション診療内で実施できる簡易版を作成し,現在のところ約20名の脳卒中後疼痛のデータを記録できている.その結果,温冷刺激によって痛みを過度に感じる症例では痛みの予後が悪いことが明らかになりつつある.これについては,QSTの評価キット整備がやや遅れていることが要因となって進捗はやや遅れているが,今後も継続して症例数を増やして実施していく.神経生理学データの集積については,脳卒中後疼痛に特有の体性感覚誘発電位を記録するシステム構築に時間を要しているが,現在のところでは,触覚刺激で痛みを感じる症例のための体性感覚誘発電位記録システムを構築できた.今後は,温冷刺激で痛みを感じる症例のための体性感覚誘発電位記録システムを構築する予定であるが,まだ症例への実施ができていないため,進捗としてはやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
痛みの性質アンケートおよび定量的感覚検査(Quantitative Sensory Test: QST)のデータを継続して蓄積していき,予後予測のためのデータベースを洗練化する.また,これらのデータから予後を予測するためのシステムも同時進行で構築していく予定である.そして,この予後予測システムを臨床現場に導入し,これの精度と使用感についてのデータを集め,リハビリテーション現場で役立つものなのかを検証する予定である.神経生理学データの集積については,早急に計測システムを完成させ,リハビリテーション現場での実装を実現させる予定である.そして,その結果を予後予測システムに踏襲することで予測精度が高くなるのかを検証していく予定である.ただ,もし,リハビリテーション現場で神経生理学データの計測環境を整えることができなかった場合の代替案として,脳損傷部位の分析を検討している.具体的には,MRI画像から損傷部位を分析し,それと臨床症状および予後を関連づける.これによって,脳卒中後疼痛の予後が不良な症状だけでなく,その脳メカニズムが考察できると考えている.実際に,既に約20名における脳損傷部位と痛みの特徴を結びつける分析は進めており,視床の後部を損傷している症例では痛みが慢性化しやすい傾向が見えてきている.このような代替案も視野に入れながら研究を進めていく予定であるため,本研究で目的としていることについては予定通り達成されると考えている.
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Causes of Carryover |
新型コロナによって学会発表ができなかったが,次年度では現地開催型の学会へ参加して成果発表をする予定であり,その交通費として使用する.
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