2020 Fiscal Year Research-status Report
速筋線維を標的とした低強度ダウンヒル歩行トレーニング方法の開発
Project/Area Number |
20K11268
|
Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
菅原 仁 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (90613290)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
只野 ちがや 東邦大学, 医学部, 講師 (40261094)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 遠心性収縮 / ダウンヒル / 低強度 / ヒールレイズテスト |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの我々の研究により、立位での自重を用いたヒールドロップ(遠心性収縮)とヒールレイズ(求心性収縮)の組み合わせによる低強度筋力トレーニングは効果的であることがわかっている。一方、遠心性収縮は低強度であっても速筋線維が動員されるため、強度の低いダウンヒル歩行でも筋力トレーニング効果が得られる可能性がある。遠心性収縮トレーニングの先行研究では、高強度トレーニングの報告が多く、低強度による筋力トレーニングの実験研究は少ない。特に低強度での遠心性収縮であるダウンヒル歩行トレーニングの効果検証はされていない。そこで、本年度は低強度ダウンヒル歩行トレーニングの効果を明らかにするための評価手法の検討を行った。下腿三頭筋を対象として、トレーニングの効果をフォースプレートを使ったヒールレイズテスト(強く速い底屈運動)、および筋線維タイプの異なる神経筋への作用を低強度運動中の誘発筋電図を用いて検証した。その結果、フォースプレートを使ったヒールレイズテストで得られた力発揮率(RFD)は、足関節の等尺性最大随意収縮力(MVC)と関連性があることがわかった。さらに、短期的筋力トレーニングにおける効果検証では、MVCとRFDの増大率が異なることが示された。このことから、フォースプレートを使ったヒールレイズテストは、高齢者の体力測定会などで利用が可能であることがわかった。また、低強度運動中の誘発筋電図測定(H波)では、安静時と随意運動中の振幅の違い、および速筋線維の動員による神経筋活動変化に伴う腓腹筋とヒラメ筋の振幅変化が異なることを明らかにすることができた。よって、同評価手法は低強度ダウンヒル歩行トレーニングの効果判定に利用できることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
簡易な筋機能テストとして、フォースプレートを使用した力発揮率(RFD)による筋力トレーニング効果の判定ができることが判明した。ヒールレイズテストで得られたRFDと等尺性最大随意収縮力(MVC)との間には相関があることが明らかになった。また、短期的筋力トレーニングの効果は、MVCとRFDともに増大するが、MVCよりもRFDの方が増大効果が大きいことがわかった。これについては、他の研究者によって明らかにされていない。これに加えて、誘発筋電図(H波)を使った評価では、速筋線維の動員パターンにより筋線維タイプの異なる腓腹筋とヒラメ筋への影響が違うことがわかった。速筋線維の多い腓腹筋から導出されるH波は、速筋線維が動員されやすい条件下では振幅が大きくなりやすく、速筋線維を標的としたトレーニング(ダウンヒル)の効果検証に使用できる可能性が示唆された。しかし、ダウンヒル歩行のトレーニング効果の可能性を探るために実施する予定であった歩行時の筋電図解析は、COVID19の感染症予防のため実施することができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に実施できなかったダウンヒル歩行トレーニングの効果検証の予備的な実験より開始する。ダウンヒル歩行の勾配、速度を決定し、トレーニング実験を行う。COVID19の感染対策から現時点では、高齢者を被験者として実施することが難しいため、壮年から中年を対象として実験を進める。壮年と中年の比較からトレーニングの特異的な作用を確認する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、COVID19のため、トレーニング効果の可能性を探るために実施する予定であった歩行時の筋電図解析が行えず被験者謝金が発生しなかったことと、本年度の学術大会はオンラインで開催されたため旅費が必要なかったためである。未使用額は、今年度に購入予定していたスロープの購入と被験者謝金に充てる予定である。令和3年度はトレーニング効果検証のため、被験者謝金と被験者の保険加入費に多くを充てる予定である。また、筋電図測定のための消耗品購入費に使用する。
|
Research Products
(2 results)