2021 Fiscal Year Research-status Report
地域在住高齢者の認知症予防に役立つ嗅覚刺激を用いた回想法の有効性に関する研究
Project/Area Number |
20K11283
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
花岡 秀明 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (10381419)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高齢者 / 回想法 / 認知症予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、高齢者に対する認知症予防に役立つ非薬物療法の1つとして回想法が試みられているが、回想を促す手がかりの使用根拠は、十分な検討が行われていない。我々は、回想を促す手がかりの使用根拠について、これまでいくつかの検討を重ねてきており、嗅覚刺激を活用することよって高齢者の回想を促すことに着目をした。本研究では、認知症を発症してない地域在住高齢者を対象に、介入プログラムによる効果検証を行う前に、まず、高齢者の回想に役立つ嗅素の種類を検討し、その調査結果に基づいた根拠を持った嗅覚刺激を用いた回想法を行い、認知機能および認知症リスク要因(抑うつ、社会的孤立)に対する短期的、中期的効果を検証し、認知症予防に役立つ回想法プログラムの開発に役立てることを目的としている。 初年度である令和2年度は、高齢者の回想に役立つ嗅素を選定するため、簡便で安定した嗅素の提供につながる嗅覚検査キットに着目し、回想手がかりへの応用を検討したものの、高齢者の回想につながる嗅素を検査キットの中から選定することができなかった。令和3年度では、令和2年度の結果を踏まえて、まず高齢者の回想に役立つ適切な嗅素を再選定するため、高齢者にとって親しみがある嗅素の確認および選定を文献レビューにより行った。そして、文献レビューから、普段の日常生活の中にある38種類の嗅素を選出することができた。この38種類の嗅素から、回想に役立つ嗅素をさらに選出するため、地域在住高齢者を対象とした調査を計画し、高齢者が利用する介護予防を目的とした通いの場においてデータ収集を行った。この間、新型コロナウイルス感染症拡大の時期があり、調査を予定していた通いの場が一時的に閉鎖され、令和3年度中に予定していたすべての場所おいて調査を終えることができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
我々は、本研究を行う以前から、高齢者の回想を促す手がかりについて、日常生活の感覚刺激と回想との関連を調査し、嗅覚刺激を高齢者が想起する手がかりとした回想法を試み、会話のみで行う回想法よりも、嗅覚刺激を用いた回想法が抑うつの軽減に効果があったことを報告してきた。しかし、選択した嗅素が、高齢者の回想を促すために、更なる検討が必要をなっていた。また、地域において簡便に用いることができる嗅素の提供も課題となっていた。 本研究が開始した2020年には、簡便に安定した嗅素を提供するため、嗅覚検査キットに着目した。嗅覚研究用 嗅覚同定能力測定用カードキットであるOpen Essenceや嗅覚識別テスト(UPSIT series)を用いて事前調査を行ったが、各嗅素は検査用のためか、研究協力者からは実際の匂いと異なる、あるいは化学的な匂いで馴染めないなど、回想法に応用することについて、複数の否定的な意見が寄せられた。 2021年度の研究計画は、信頼性のある嗅覚検査キットから回想法に役立つ嗅素を選び、嗅覚刺激を用いた新たな回想法プログラムを作成する予定であったが、前年度の予備的な検討の理由から研究計画の見直しが必要となつた。そこで、再度、嗅覚刺激を行うため、嗅覚検査キットの応用でなく、嗅覚刺激となる原物の準備を根拠をもって行うため、事前準備の計画を行った。対象者に対して、実際に対面で嗅素に対する反応などを確認することが適切であると考えたが、コロナ感染拡大によって対面による調査を行うことできないため、アンケート用紙を作成して、日本人に馴染みのある嗅素に対する回想経験を中心に、調査を実施した。その後、アンケート調査については、複数の地域で協力を得ることができたが、コロナ感染拡大で調査を依頼しているフィールドでの対面行事が中止となり、2022年度の4月末でその調査を終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度においては、2021年度を中心に行ったアンケート調査を整理し、無理なく、高齢者に提供できる嗅素について、選定を行うする予定である。選定後は、これらの嗅素が実際に回想に役立つか、高齢者に受け入れやすく、実用的に用いることができるか、予備的に地域在住高齢者に用いてもらい、提供方法やその選定について、再度確認を行う予定である。 回想に用いる嗅素の確認を終えた後、新たな嗅覚刺激を用いた回想法介入プログラムを行うため、倫理審査委員会の手続きを行い、実施に介入を行う予定である。介入については、十分な新型コロナウイルス感染対策を行った上で実施し、介入予定のフィールド関係者に対して、事前連絡および説明を丁寧に行うことを計画している。 調査の実施も遅れが生じたため、介入計画から実施においても、その影響があるものの、関係者の協力を得ながら、今後すすめる。
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Causes of Carryover |
2021年度は、回想法に役立つ日本人に馴染みのある嗅素を確認するため、地域在住高齢者の方が介護予防の目的で通う場において、回想に役立つ嗅素の調査を予定していた。また、この調査から得られた結果から、今後の介入研究で用いる嗅素の選定やアクトカム評価の準備を予定していた。 しかし、新型コロナウイルス感染拡大により、高齢者の通いの場への依頼が遅れ、更に、調査開始後、通いの場の活動中止があり、調査を実施することが困難になった。通いの場の再開後、連絡調整を行いながら、調査を再開することができたものの、当初の予定より、実施が遅れ、予定通り研究費を使用することができなかった。 2022年度は、2021年度の後半に予定した調査を実施した上で、嗅素の選定やアウトカム評価の準備のために予定していた研究費を使用する予定である。その後、2022年度に予定している介入研究のため、2022年度の研究費を使用する予定である。
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