2023 Fiscal Year Annual Research Report
地域在住高齢者の認知症予防に役立つ嗅覚刺激を用いた回想法の有効性に関する研究
Project/Area Number |
20K11283
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
花岡 秀明 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (10381419)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 回想法 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者の精神的健康の維持・向上が重要となり、これらは、認知症リスクの軽減に役立つことが知られている。現在、認知症予防に役立つ非薬物療法が求められ、その手段の一つとして回想法がある。回想法は、未だ、実施方法の議論があり、回想を促す手がかりを用いる根拠の検討が必要されており、近年では、嗅覚に着目した試みが行われている。本研究の目的は、地域在住高齢者を対象にして、嗅覚刺激を用いたグループ回想法の有効性を検討することである。2023年度は、期間延長した4年目、最終年度であった。 方法として、対象者を無作為化により、嗅覚刺激を用いてグループ回想法を行う群と言語刺激を用いて回想法を行う群の何れかに割り付けをし、両群において、介入前、介入後、介入終了後3か月後の評価を実施した。評価尺度には、抑うつ状態はGDS-15、孤独感は日本語版UCLA孤独感尺度、不安感はPOMS2の評価を用いた。嗅覚刺激群では、週1回の頻度で嗅覚刺激を用いて回想を促す、グループ回想法を8回行い、匂いの種類として、カレーや石鹸、チョコレートなどを用いた。言語刺激群では、週1回の頻度で、学校の思い出、家庭生活の思い出など、各回にテーマを設定して、8回のグループ回想法を行った。データ収集の後、反復測定による分散分析を用いて、嗅覚刺激を用いたグループ回想法の有効性を検討したところ、3つの評価項目全てで、有意な交互作用は認められなかった。 以上のことから、一般的に行われいてるテーマを用いたグループ回想法より、嗅覚刺激を用いたグループ回想法の方が、高齢者の精神的健康へ効果があるとは言及できないことが示された。嗅覚刺激については、対象者が経験した嗅覚刺激を提供する必要があり、過去の記憶に関連した、各対象者の個別性に配慮した嗅覚刺激の提供が今後の課題となると考えられる。
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