2021 Fiscal Year Research-status Report
悪液質に由来する骨格筋機能低下の病態制御を基盤とした新規予防・治療戦略の開発
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20K11296
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
岩田 全広 日本福祉大学, 健康科学部, 教授 (60448264)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 悪液質(カヘキシー) / 骨格筋機能低下 / 筋萎縮 / 筋肥大 / 温熱刺激 / ビタミンD / グルココルチコイド / グルココルチコイド受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,熱という物理的刺激と脂溶性ビタミンに対する筋細胞応答に着目し,温熱刺激またはビタミンD投与が悪液質による代謝異常とそれに伴う筋萎縮の進行過程に及ぼす影響とその作用機序の解明を行い,臨床応用に向けた科学的根拠を集積する。加えて,温熱刺激とビタミンD投与を組み合わせた治療介入が,タンパク質の合成能・分解能とエネルギー代謝を相加的に改善することで,より効果的かつ効率的に悪液質に由来する骨格筋機能低下を抑制するのではないかといった仮説を検証することを目的としている。 2021年度は,マウス大腸癌由来細胞株(Colon-26細胞)と共培養することで癌性悪液質を惹起したC2C12筋管細胞を用いて,温熱刺激またはビタミンD投与が悪液質に伴う骨格筋萎縮の進行過程に及ぼす影響とその作用機序について検討した。その結果,(1)共培養開始前にHSP70の発現を誘導する温熱刺激を行うと,癌性悪液質に伴うタンパク質の合成抑制・分解亢進に関わる細胞内シグナル伝達分子の活性化と筋萎縮が有意に抑制できること,(2)この抑制効果はHSP70阻害剤によってキャンセルされることを明らかにした。また,癌性悪液質の病因において重要な役割を果たすグルココルチコイドをC2C12筋管細胞に投与すると,筋タンパク質の合成抑制・分解亢進を介した萎縮が惹起されるが,(3)グルココルチコイド投与前にmTOR活性マーカーであるp70S6Kのリン酸化を誘導するビタミンD投与を行うと,グルココルチコイド投与に伴うタンパク質の合成抑制に関わる細胞内シグナル伝達分子の活性化と筋萎縮が有意に抑制できること,(4)この抑制効果はmTOR阻害剤によってキャンセルされることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による世界的なパンデミックの影響を受け,研究を計画通りに遂行することが困難であった。理由は複数あるが,主要なものとしては,本務校での学内講義および学外実習がオンライン授業に変わったことに加えて,体調不良教員に係る教育・学部運営業務の代替実施や補助など,その対応に多くの時間が割かれたことが大きな原因として挙げられる。しかしながら,次年度に向けて実験環境の確保などの計画はすでに目処が立っており,研究を進めることができる体制は整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
未だ新型コロナウイルス感染症の蔓延状況に収束の見通しが立たないが,現状はある程度の研究計画の目処が立った。今後は培養細胞を用いた追加実験を行うとともに,悪液質に由来する骨格筋機能低下に対するビタミンD投与と温熱刺激を組み合わせた治療効果を検証していく予定である。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」でも述べたように,新型コロナウイルス感染症による世界的なパンデミックの影響を受け,研究を計画通りに遂行することが困難であった。2022年度は培養細胞と実験動物を用いるため,細胞培養や動物飼育などに必要となる消耗品(培養容器・培地・試薬など)の購入経費が必要となる。また,各実験終了後には生化学的検索と分子生物学的検索を各種抗体や試薬,測定キットを用いて実施する。そのため,これらの購入経費が必要となる。 実験技術の一部の協力・支援を早稲田大学,日本体育大学,名古屋大学の研究者に依頼しており,出張旅費が必要である。また,情報収集や成果発表のため,国内外の関連学会に参加を予定しており,その旅費が必要である。なお,旅費は公共交通機関利用,宿泊費を含んでいる。本研究に関する情報収集に伴い,会議費や印刷費が必要となる。また,成果発表に際しては,英文校閲料および投稿料が必要である。そのため,これらの費用が必要となる。
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Research Products
(3 results)