2020 Fiscal Year Research-status Report
関節リウマチ由来滑膜細胞のメカニカルストレス受容メカニズムの解明
Project/Area Number |
20K11297
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Research Institution | Osaka University of Human Sciences |
Principal Investigator |
奥村 裕 大阪人間科学大学, 保健医療学部, 准教授 (10727572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 都 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (00033358)
浅田 啓嗣 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 教授 (10440851)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 関節リウマチ / 滑膜細胞 / メカニカルストレス / CRACチャネル / カルシウムイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間前半は新型コロナウィルスの影響により実験が遂行できず、進行していない。研究期間後半では、滑膜細胞の力学的刺激(shear stress; SS)に対する細胞内カルシウムを介したシグナル伝達経路においてCRACの関与を明らかにすることを目的とし研究を実施した。 細胞は、正常ヒト滑膜細胞(Normal FLS)および関節リウマチ由来ヒト滑膜細胞(RA FLS)を使用した。細胞内のCa2+濃度([Ca2+]i )の測定では、Fluo 3-AMを添加したDMEMを用いて,37℃で60分間インキュベートした滑膜細胞にSSとしてガラス製マイクロピペットから窒素ガスを噴出させて2回機械的刺激を加えた。蛍光倒立顕微鏡に装着したデジタルイメージングシステムを用いて滑膜細胞の([Ca2+]i)の変化を測定した。 コントロールバッファーでは、Normal FLSの第1回目の反応に対する第2回目の反応は約66.7%に減少し、RA FLSでは約58.0%に減少し、Normal FLSとRA FLSの間には有意な差はなかった。YM-58483を添加すると、Normal FLSの第1回目の反応に対する第2回目の反応は約63.6%に減少したが、RA FLSでは約30.9%とNormal FLSに比べ有意に減少させた。このことから、CRACチャネルの活性化がRA FLSの応答に寄与していることが示唆された。 また抗CRACR2A抗体による免疫細胞化学的分析では、Normal FLSとRA FLSの免疫蛍光染色と微分干渉コントラスト(DIC)像を観察した。その結果、抗CRACR2A抗体陽性細胞の平均免疫蛍光強度は、Normal FLS では約4.08であり、RA FLSでは約20.3であり、RA FLSではNormal FLSに比べて有意に低かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究期間前半は新型コロナウィルスの影響により実験が遂行できず、進行していない。また学会発表を予定していた学会の開催も中止となり発表も行えていない。研究期間後半では、正常ヒト滑膜細胞(Normal FLS)および関節リウマチ由来ヒト滑膜細胞(RA FLS)を使用し、ガラス製マイクロピペットから窒素ガスを噴出させて2回機械的刺激(shear stress; SS)を滑膜細胞へ与え、その時の細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i )を測定した結果、第1回目の反応に対する第2回目の反応は有意差がないが、CRAC阻害薬を投与すると、第1回目の反応に対する第2回目の反応はRA FLSではNormal FLSに比べ有意に減少した。このことから、CRACチャネルの活性化がRA FLSの応答に寄与していることが示唆された。また抗CRACR2A抗体による免疫細胞化学的分析では、抗CRACR2A抗体陽性細胞の平均免疫蛍光強度は、RA FLSではNormal FLSに比べて有意に低い結果となった。このことより、CRACが活性化する時に必要となるCRACR2AがRA FLSでは多く観察された。このことによりRA FLSではよりCRACが活性化しているのではないかと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、正常ヒト滑膜細胞(Normal FLS)および関節リウマチ由来ヒト滑膜細胞(RA FLS)における機械的刺激により活性化するとされるTRPファミリーのTRPV4チャネルの働きや、その分布について、カルシウムイメージングによる細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i )の変化や免疫細胞化学的分析により検証する予定である。これらの検証により、SSにおける細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i )上昇時のチャネルの選択性を検証する予定である。また、今回の実験では細胞外の培地にもCa2+が含まれていることから、Ca2+フリーの条件下におけるSSに対する滑膜細胞内のCa2+濃度([Ca2+]i )の変化を検証する予定である。
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Causes of Carryover |
研究前半では、新型コロナウィルスの影響により研究ができない状況であり、実験を遂行できなかった。また、発表を予定していた学会が開催中止となったため、成果発表が行えなかった。 使用計画としては研究テーマに沿って実験を継続するための備品や解析に必要な備品購入に使用する予定である。加えて、今年度は成果発表に使用する予定である。
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