2020 Fiscal Year Research-status Report
繰り返し脳震盪予防のためのセカンドインパクトによる脳損傷重症化リスクの推定
Project/Area Number |
20K11309
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
青村 茂 東京都立大学, システムデザイン研究科, 客員教授 (20281248)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中楯 浩康 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (10514987)
張 月琳 上智大学, 理工学部, 助教 (20635685)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 繰り返し脳震盪による重症化 / セカンドインパクト / 頭部衝突事故の再現・解析 / 神経細胞衝撃実験 / アストロサイトの活性化 / 血液脳関門への衝撃負荷応答 / Diffuse Axonal Injury / ヘルメットの頭部防護効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請テーマ「繰り返し脳震盪予防のためのセカンドインパクトによる脳震盪重症化リスクの推定」は、全身モデルを用いて運動学的に事故及び頭部の衝突を再現し、さらに頭部の詳細モデルを用いて、脳の詳細にわたるひずみと歪速度を解析して求めるシミュレーション技術の確立し、さらに求められた頭部に対する繰り返しを含む衝撃負荷が脳内の神経細胞へ及ぼす影響を求める細胞実験の両面から進めれる。
前者は様々な領域(交通事故、スポーツ、日常生活、犯罪、etc.)での頭部外傷事故・事件の情報を収集し、医療データや法医鑑定データ等の事故情報データを基に動的な解析を行うことにより、シミュレーション技術の質の向上と適切な対応環境・体制を構築する。 後者は神経細胞並びにアストロサイトや血液脳関門など重要な周辺細胞や組織を用いた衝撃実験を行って、衝撃負荷を受けた神経細胞の回復度合いの定量的な分析を行う。 初年度の2020年度は、シミュレーション技術の確立として、国内某県の11年分の頭部外傷死の法医鑑定データを入手し、それらの事故・事件の再現解析を実施し、その結果を法医鑑定データと照合することにより、シミュレーション技術の確立と検証に着手した。細胞実験では衝撃を受けて低下した血液脳関門(BBB:Blood-Brain Barrier)の再活性化にアストロサイトが及ぼす影響についての実験を行った。この結果は日本機械学会バイオエンジニア部門論文集(JBSE)に採択が決定(2021末に刊行予定)した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、司法データに基づく頭部外傷事故・事件の再現および解析体制確立の準備実施しており、体制を構築すると共に一部解析活動をスタートさせた。2021年度は本格的に様々な事故・事件のケースの再現並びに解析を実施する。現在、そのための詳細な司法鑑定データの入手の準備を行っている。今後、医療データを含めて対象とする事故データの範囲を広げていく。得られた事故データのすべてが解析対象になわけではなく、1)ほぼ現状のデータで解析可、2)不足データを補うことにより解析可、3)解析不可;事故そのものが頭部外傷以外の要因も多く含まれる、4)解析不可;解析のための情報が圧倒的に足りない、の4段階に分けて対応する予定である。 細胞実験では神経細胞へ繰り返し衝撃を与えて、長時間にわたってその応答を観察できるために重要な、神経細胞の長期間安定培養技術、並びに環境作りを目指す。現在、培養に限っては長期間の神経細胞の育成が可能となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
頭部損傷事故のシミュレーションにおいては、司法鑑定データに基づくもの、病院等の医療データに基づくものと条件の範囲を広げていく。さらには情報が不足している場合に、その不足分を補いながらシミュレーションを行って精度を高めていく技術を向上させていく。
細胞実験では弱い衝撃を受け、軽微な損傷を負った神経細胞の長期にわたる安定的培養と、さらに衝撃が繰り返された時の応答を観察できる環境、体制を構築する。
現在、解析及び実験はそれぞれ遠く離れた場所で実施している(都立大学:八王子、信州大学:上田、上智大学:四谷)が、ある程度のリモート環境での実施は予定していたが、コロナ感染症の拡大の影響で、大学院生の指導や定期的な報告・打ち合わせもままならない状況である。今後感染拡大がさらに深刻になった場合には研究の進捗にも重大な影響を及ぼすことが懸念される。
|
Causes of Carryover |
本研究は八王子-都立大学、長野県上田-信州大学、東京都内-上智大学の3か所を拠点として、学生を含む打合せや共同研究実施を計画していたが、2020年度はコロナ禍のため、出張を控えたため旅費が殆ど執行されなかった。また学会発表等も遠隔による発表や参加を見合わせたこともあり、予算において次年度使用が発生した。
|