2022 Fiscal Year Research-status Report
繰り返し脳震盪予防のためのセカンドインパクトによる脳損傷重症化リスクの推定
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20K11309
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
青村 茂 東京都立大学, システムデザイン研究科, 客員教授 (20281248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中楯 浩康 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (10514987)
張 月琳 上智大学, 理工学部, 准教授 (20635685)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 繰り返し脳震盪 / セカンドインパクトシンドローム / 多体動力学 / ヒト頭部有限要素解析 / 大脳のせん断係数の低下 / 脳幹のせん断係数の低下 / 脳の最大歪み / 外傷性脳損傷(TBI) |
Outline of Annual Research Achievements |
脳震盪の繰り返しによる重症化を防ぐために、多体動力学と有限要素法を用いて「事故の再現と解析による繰り返し脳震盪の重症化リスクの推定」の検討を行った。 まずそれぞれ単独での脳震盪発症時のビデオ記録の画像解析を行い,受傷者の全身挙動を再現して衝突時の頭部の衝突角度と衝突速度を求め、それらを初期条件として3次元ヒト頭部有限要素モデルに与え、衝撃による脳各部の応力や歪み等の負荷を詳細に求め脳震盪の発症を判定した。繰り返しによる重症化の解析では、1度目の衝撃解析の結果に応じて大脳および脳幹の剪断係数を低下させて2度目の衝撃解析を行って最終結果を得る方法、および1度目の衝撃解析と2度目の衝撃解析を独立に行い、両者の損傷を足し合わせる方法の2つの方法を検証した。検証の例題としてアメリカンフットボールの試合中で発生した2件の脳震盪事故および柔道の全日本選手権で発生した2件の脳震盪事故を対象とし、2件の事故のそれぞれを連続した1度目と2度目の事故と仮定して衝撃の繰り返しによる重症化の検証を行った。2つの方法共に脳の最大歪みおよび損傷割合において、脳震盪の繰り返しによる重症化の結果が得られた。柔道では大脳の剪断係数の低下が脳の最大歪の増加に大きな影響を与えている一方、アメリカンフットボールでは脳幹の剪断係数の低下が最大歪の増加に大きな影響を与えていた。これらの結果により損傷事故のビデオ記録を基に、繰り返し脳震盪の事故の再現と脳損傷の重症化がシミュレーション可能であることが示された。本結果は事故の再現画像を含めコンタクトスポーツの現場等への注意喚起に非常に有効であると考えられる。今後さらに衝撃による脳の物性変化を表すパラメータの調整が必要である。現状、繰り返し脳震盪の医療記録は報告されていないが、今後は本結果を一つの契機として医療記録を残しそれらの記録を基にさらに検証を行うことが望まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・外傷性脳損傷(TBI)解析の一環として、近年多発する繰り返し脳震盪事故の再現シミュレーションと脳損傷解析により重症化のメカニズムを解明すると共に、その診断支援システムの検討を行うことができた。またそれぞれの衝突事故の解析では衝突解析ならびに脳損傷解析共に順調に進んだ。アメリカンフットボールおよび柔道の試合時におけるビデオを含む脳震盪事故データをそれぞれ日本大学および全日本柔道連盟より入手し解析を行った。それぞれの種目で2ケース、計4ケースの試合時の事故データを入手し、解析では独立に発生した事故の片方を1度目、もう一方を2度目の事故として扱い予定通りに解析することができた。 ・多体動力学(MADYMO)を用いて衝突事故における人体に対する全身衝撃解析を実施し、さらに有限要素法(LS-DYNA)により頭部損傷の詳細な解析を行った。繰り返しによる脳損傷の重症化を表す以下の2つの計算方法の有効性が示された。1)最初の衝撃で脳の材料物性に変化を及ぼし、2度目の衝撃で脳がさらに大きな歪みを受ける。2)頭部全体に最初の衝撃と2度目の衝撃を時間差で与える。これらの手法で得られた損傷の重症化は妥当なものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題と展望: ・衝突の解析あたっては、診断補助を想定した場合に解析は迅速に行われる必要があり、今後ビデオによる衝突解析の自動化が課題となる。また解析結果の保存方法の検討が必要である。 ・現状、繰り返し脳震盪による重症化の具体的な医療情報が存在せず、今後医療方面への働きかけが重要である。それらの記録を基に、さらに詳細の検討を行って解析の精度を高める必要がある。特に、衝撃による脳の物性の変化に関しては実験データの入手や作成は困難であり、診断結果とシミュレーション結果との比較・検証が重要である。
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Causes of Carryover |
当初の標題である「繰り返し脳震盪予防のためのセカンドインパクトによる脳損傷重症化リスクの推定」に関しては、脳震盪発症時のビデオ記録の画像解析を基に,多体動力学による事故の再現・解析と有限要素法による頭部の詳細な損傷解析により、衝撃による脳各部の負荷を詳細に求め脳震盪の発症を判定した。繰り返しによる重症化の解析では、1度目の衝撃解析の結果に応じて大脳および脳幹の剪断係数を低下させて2度目の衝撃解析を行って最終結果を得る方法、および1度目の衝撃解析と2度目の衝撃解析を独立に行い、両者の損傷を足し合わせる方法の2つの方法を検証し、損傷事故のビデオ記録を基に、繰り返し脳震盪の事故の再現と脳損傷の重症化のシミュレーションが可能であることを示すことができた。 今後の課題としては、衝撃による脳の物性変化を表すパラメータの調整、事故の再現画像を含む本研究の結果を用いてコンタクトスポーツの現場等への注意喚起を行ってその有効性を示すと共に、現状、殆ど報告されていない繰り返し脳震盪の医療記録を残す活動の推進、さらには本システムを現場で活用するためのビデオ解析の自動化等の項目が挙げられる。幸い、予算の延長が認められたので、上記の活動を一歩一歩進めていく予定である。
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Research Products
(1 results)