2021 Fiscal Year Research-status Report
青年アスリートのスポーツ傷害を未然に予防するための包括的な大規模スポーツ疫学研究
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20K11319
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
澤田 亨 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (00642290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 利春 国際武道大学, 体育学部, 教授 (30182637)
笠原 政志 国際武道大学, 体育学部, 教授 (10535496)
清水 伸子 国際武道大学, 体育学部, 助教 (90808297)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スポーツ傷害 / 青年アスリート / 整形外科 / メディカルチェック / 追跡調査 / オンライン調査 / コホート研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)スポーツ傷害調査の実施:オンライン調査を実施し、1,185人から回答を得た。 (2)横断研究の実施:4種類のテーマについて、整形外科的メディカルチェック結果を使用して横断研究を実施した。1)対象体格や身体組成と柔軟性の関係を評価し、いくつかの柔軟性項目は体格や身体組成の影響を受けることを示唆しており、測定結果の評価に際しては被検者の体格や身体組成を考慮する必要があることを明らかにした。2)除脂肪体重と等尺性膝関節伸展力の関係を評価した。除脂肪体重、性別、体脂肪率それぞれの標準偏回帰係数が0.59、-0.15、-0.09であることを確認し、筋力と除脂肪体重の間に性別や除脂肪体重を調整した後も明らかな正の相関があることを明らかにした。3)関節の弛緩性と柔軟性の関係を評価した。上部体幹回旋、肩関節、肩関節、大腿四頭筋、ハムストリングそれぞれの柔軟性における全身関節弛緩性得点の多変量調整オッズ比は0.57、0.66、0.61、0.63、0.60であった。さまざまな部位の柔軟性は関節弛緩性と強い関連があることを示唆しており、アスリートを対象としたコンディションチェックにおいて両者の関係を考慮した評価が必要であることを明らかにした。 4)体格、身体組成、筋力を考慮したうえで柔軟性の男女差を評価した。肩関節、大腿部前面、大腿部後面は男性と比較して女性の柔軟性が高いことが確認された。一方で、上部体幹、肩関節については統計的に有意な性差は観察されなかった。また、大腿部前面は体重もしくは除脂肪体重を、大腿部後面は身長を説明変数としてモデルに投入すると性差は認められなくなった。柔軟性の評価は性別以外にも体格や身体組成の影響を受けることを示唆しており、一般的に柔軟性が高いと考えられている女性においても柔軟性の評価がコンディショニングチェックの項目として重要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
整形外科的メディカルチェック結果データベースの構築については、新型コロナウイス感染症の拡大の影響を受けて研究打ち合わせや共同作業が予定通り開催できず、データベース構築が当初の計画より遅れ気味のスケジュールとなっている。整形外科的メディカルチェック結果に関しては、数年間分のデータベースが完成し、横断的なデータ解析を実施した。解析結果は第32回日本臨床スポーツ医学会において、大学生の性別と柔軟性の関係(清水伸子)、大学生の除脂肪体重と等尺性膝関節伸展力の関係(郡山さくら)、大学生の体格や身体組成と柔軟性の関係(笠原政志)、大学生の関節弛緩性と柔軟性の関係(佐野颯斗)を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究については新型コロナウイス感染症の拡大の影響による遅れを取り戻すとともに、下記の3項目について取り組んでいく。 (1)スポーツ傷害調査結果のデータベース化:オンライン調査を実施して得られた1,185人のデータをデータベース化する。 (2)整形外科的メディカルチェック結果とスポーツ傷害調査のデータベースの結合:データベース化している整形外科的メディカルチェック結果とスポーツ傷害調査結果のデータベースを統合する。 (3)データ解析:整形外科的メディカルチェック結果とスポーツ傷害調査のデータベースを結合したデータベースを使用し、どのようなスポーツ種目の、どのような傷害の発生と関係しているかを、多変量解析モデルを使用し、性別や競技歴といった交絡因子を調整したうえで、明らかにする。 (4)学会発表および論文執筆:学会発表や論文執筆を行って、研究成果を他の研究者と共有する。
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Causes of Carryover |
整形外科的メディカルチェック結果データベースの構築について、新型コロナウイス感染症の拡大の影響を受けてデータベース構築作業が遅れたり、合同での研究会を開催することができなかった。2022 年については整形外科的メディカルチェック結果データベースの構築作業を進めるとともに、合同での研究会を開催して前年の遅れを取り戻す予定である。
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