2021 Fiscal Year Research-status Report
愛好者の組織化を可能にするスポーツ組織のガバナンス構造に関する国際比較研究
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20K11322
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Research Institution | Yamanashi Gakuin University |
Principal Investigator |
笠野 英弘 山梨学院大学, スポーツ科学部, 准教授 (20636518)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スポーツ組織 / ガバナンス / サッカー協会 / 愛好者の組織化 / 登録 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、サッカーを事例として、スポーツの文化的な自立を目指すための愛好者の組織化を可能にするスポーツ組織のガバナンス構造を国際比較から明らかにすることである。そのため、2021年度は国内インタビュー調査を実施した。対象組織は当初の予定通り、より愛好者に近い立場で組織されていると考えられる下部組織(都道府県のサッカー協会)とし、具体的には東京都サッカー協会及び秋田県サッカー協会とした。その理由は、2020年度サッカー選手登録者数が最も多い都道府県協会が前者、最も少ない協会が後者であり、それらを比較しながら考察することで、日本の都道府県レベルのスポーツ組織のガバナンス構造の特徴を明らかにしようと考えたためである。なお、日本協会と都道府県協会の間に位置する地域協会である東北サッカー協会にも調査を行った。インタビュー対象者としては、いずれの組織においても会長または専務理事等の各種決定権限をもつ役職者とした。調査の目的は、多様なサッカー愛好者の組織化(登録)を促進するために実施している事業等やそのための組織(協会)内の構造(部署や予算等)、また強化に対する普及(愛好者の登録促進)の位置づけ等を明らかにすることとした。 調査の結果、いずれの協会においても、愛好者の組織化について問題意識をもっており、そのための議論や試行事業等を行っているが、現状は大会参加というメリットにより登録する競技者の組織化にとどまっている状況であった。その理由としては、人手や予算不足によるところが大きいことに加えて、施設不足の問題も挙げられた。したがって、現場レベルでは、いわゆるヒト・モノ・カネの問題解決に加えて大会参加以外の登録メリットの創出が求められると考えられた。 次年度はこれらの調査結果を本研究において構築した分析枠組みや制度的な側面からさらに分析するとともに、予定通り国外における調査を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は国内調査を行い、日本のスポーツ組織のガバナンス構造の特徴を明らかにすることを計画し、国内調査の実施は完了したが、とその結果の詳細な分析にまでは至らなかった。その理由は、昨年度同様、新型コロナウイルス感染症流行の影響により、調査の日程を確定することができず、最終的には年度末にオンライン(zoom)によるインタビュー調査により実施することができたが、調査結果の詳細な分析のための時間を確保することができなかったためである。ただし、国内調査は終えており、2022年度に実施予定の国外調査前にはその結果をもとに詳細な分析をすることができる予定であることから、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は当初の計画通り国外調査を行うが、その前に、まず早急に国内調査結果を本研究において構築した分析枠組みや制度的な側面から詳細に分析し、日本のスポーツ組織のガバナンス構造の特徴を示す。そして、その特徴や国内インタビュー調査時における調査方法等の課題を踏まえて、国外調査の調査内容や計画を立てることとする。国外調査における調査対象は、当初から予定しているドイツ及びブラジルの州レベルのサッカー連盟とするが、具体的な対象組織を選定後、新型コロナウイルス感染症の各国での状況を鑑みながら、渡航(調査)日程を計画することとする。また、調査内容については、事前にメールや文書で可能な確認をするとともに、それらからは明らかにできない内容等を中心に実際のインタビュー調査から明らかにする。ただし、新型コロナウイルス感染症の流行状況等によっては、研究計画通りに進められない場合があるため、その場合の対応(国外調査の延期等)も常に考慮に入れながら進めていく。 なお、それ以降についても当初計画通り、2023年度は調査結果を踏まえて我が国のスポーツ組織のガバナンス構造の現状と課題を指摘し、2024年度には、分析を深化させ、同様の視点から我が国のスポーツ組織が目指すガバナンス構造モデルの提案を試みるとともに、その成果発表を通じて提言を行う計画である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、2021年度国内調査のために国内旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染症の流行により、調査方法をオンライン(zoom)によるインタビューに変更して調査を実施したため、国内出張旅費を使用することがなく、次年度使用額が生じた。 2022年度は、当初の計画通り、国外調査における渡航費、通訳兼コーディネーター及びインタビュー対象者への謝金、研究資料やインク・トナー等の消耗品に使用するとともに、2021年度未使用額分については、2021年度に実施できなかったインタビューのテープ起こし費用等に使用する予定である。
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