2022 Fiscal Year Research-status Report
愛好者の組織化を可能にするスポーツ組織のガバナンス構造に関する国際比較研究
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20K11322
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Research Institution | Yamanashi Gakuin University |
Principal Investigator |
笠野 英弘 山梨学院大学, スポーツ科学部, 准教授 (20636518)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スポーツ組織 / ガバナンス / サッカー / 愛好者の組織化 / 登録 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、サッカーを事例として、スポーツの文化的な自立を目指すための愛好者の組織化を可能にするスポーツ組織のガバナンス構造を国際比較から明らかにすることである。そのため、2022年度は、2021年度に実施した国内インタビュー調査を踏まえて、当初の予定通り国外調査を実施した。具体的には、ドイツの州レベルのサッカー連盟にあたるヴェストファーレン州サッカー・陸上競技連盟(以下「FLMV」と略す)及びザールラント州サッカー連盟(以下「SFV」と略す)を対象として半構造化インタビュー調査を行った。前者の組織は、ドイツ国内の21地区の中で2番目に多い登録者数、後者の組織は同18番目の登録者数を有しており、これらの対象組織は、日本国内の調査対象とした登録者数が最も多い東京都サッカー協会や最も少ない秋田県サッカー協会と比較することを想定して選定した。インタビュー対象者としては、いずれの組織においても各種決定権限をもつ役職者である専務理事とした。調査の内容は、国内調査と同様、多様なサッカー愛好者の組織化(登録)を促進するために実施している事業等やそのための組織(協会)内の構造(部署や予算等)、また強化に対する普及(愛好者の登録促進)の位置づけ等とした。 調査の結果、いずれの連盟においても、クラブ数やチーム数の減少に対する問題意識をもちはじめており、両者の連盟の規模は異なるが、その問題に対応する部署や担当者を配置していた。具体的には、FLMVは60人程度の職員の中から5人程度が1部署を構成してこうした問題に対応しており、SFVは18人の職員の中から1人の担当者が対応していた。そして、それらの担当部署や担当者が愛好者の組織化という課題に対する制度を企画・設計している様子もみられ、まさに本研究が着目している組織が生成する愛好者を組織化するための制度と組織内構造との関係の一部がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度はドイツとブラジルにおいて国外調査を行う予定としていたが、ブラジルにおける調査は実施することができなかった。その理由は、新型コロナウイルス感染症流行によって数年延期されていた他の研究の海外調査を2022年度内に実施する必要があり、やむを得ずブラジル調査を2023年度に実施することとしたためである。しかし、それ以外の国内外調査等は終えていることや、既にブラジル調査の計画や準備は進んでおり、2023年度に当該調査を実施できることがほぼ確定している。したがって、当初の研究全体の計画通り、2023年度に調査結果の解釈や国際比較分析を行い、最終年度である2024年度に成果を公表することが可能であることから、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は当初2022年度に計画していたものの延期せざるを得なかったブラジルにおける調査を行う。それと同時に、当初の計画通り、ドイツ調査の結果を分析し、国内調査結果との比較も行う。ブラジル調査実施後には、ブラジル調査の結果分析と比較を加えて、本研究全体としての分析を進める。そこでは、愛好者の組織化という観点からみたスポーツ組織のガバナンス構造の特徴を日本、ドイツ、ブラジルそれぞれにおいて示すとともに、それらの比較から日本の特徴や課題を明らかにする。また、学会や研究会等における発表や議論を通して分析を深化させ、2024年度には同様の観点から我が国のスポーツ組織が目指すガバナンス構造モデルの提案を試みるとともに、その成果発表を通じて提言を行う。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、2022年度国外調査としてブラジル調査に関わる経費(渡航費、通訳兼コーディネーター及びインタビュー対象者への謝金等)を計上していたが、やむを得ず延期したため、当該経費を使用することがなく、次年度使用額が生じた。 2022年度未使用額分については、2023年度に実施するブラジル調査に関わる経費に使用する予定であり、その他の経費については当初の計画通りに執行する予定である。
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