2023 Fiscal Year Research-status Report
Molecular hydrogen as a novel regulator of exercise-induced oxidative stress.
Project/Area Number |
20K11332
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Research Institution | Yamanashi Gakuin University |
Principal Investigator |
小山 勝弘 山梨学院大学, スポーツ科学部, 教授 (30313779)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水素分子 / 酸化ストレス / 経鼻吸入 / 高強度運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「不活性ガス」とされてきた気体状の水素分子の生理作用,特に非常に激しい生体ストレスを生じた際の回復局面における保護作用について検討することである.我々は様々なストレスをほぼ不可避的に被ることがある.例えば受動喫煙,放射線被曝,紫外線照射,あるいは代謝性疾患等による過剰な炎症反応等である.これらの現象には生体内で発生する酸化ストレス(または活性酸素種による作用)が大きな影響を及ぼしていると示唆されており,それを意図的に制御することが健康寿命の延伸にとって極めて重要な視点となる.本研究では過度のストレスを,運動を介して発生させるモデルを利用し,「水素分子は高強度運動に起因して生じる過剰な酸化ストレスや炎症反応等を軽減するが,一方では,運動刺激に対するポジティブな生体応答を積極的に引き出す酸化ストレス調節因子として機能する」という仮説を検証する.すでに2020年に,水素と酸素の高濃度混合ガス(推定吸入気酸素濃度 21.57%,水素濃度4.08%)の吸引が,酸化ストレス指標の増大を抑制する可能性を示唆しているが,これらのガス組成(濃度)を変えるとどのような差異が生じるのかは不明である.この点を検証することが,水素分子の生理作用の追究には不可欠であると考えている. 新型コロナウイルス感染症の蔓延等による影響を受けて実験研究が実施できない間,国内外のヒトや動物モデルを用いた先行研究について文献的検討を重ね,水素分子の作用機序を追求する観点を加える計画とした.炎症反応や酸化ストレスに関与する好中球の活性化状態を,好中球細胞外トラップやミエロペルオキシダーゼ活性の挙動等から検証する予定である.また,分析化学技術の進歩によって可能となった,血清中低分子代謝産物の網羅的解析(質量分析法)によって,水素分子の吸入によって変動する代謝システムについても検討する計画を立てている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の日本国内における位置づけが,これまでの「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」から「5類感染症」に移行された(2023年5月8日).このことを受けてヒトを対象にした実験介入研究,特に運動負荷や採血・採尿等を伴う研究について,再開できる見通しが立った.2023年度は,運動直後から1時間,カニューレにより経鼻吸入させる混合ガスの生成方法について再検討を試みた.研究計画当初予定していた混合ガス発生装置は,一定の組成を持つ混合ガスを安定的に提供できるが,その中の水素,酸素,窒素を自由に可変し,安定的に供給することが難しいことが判明したためである.この課題に対して,組成の混合ガスを予め作成し,レギュレーター等の活用により研究計画通りの実験条件で研究を遂行する見通しを立てた.2024年度は,所属機関内の研究倫理審査を経てヒトを対象とした検討を開始する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画書に示された方法の細部について,実現可能性を重視した再検討を行い,所属機関における研究倫理審査委員会の承認を取り,速やかに研究を開始する.ヒトへの介入実験研究成果を踏まえて進める予定の動物モデルによる検証についても併せて検討し,水素分子の可能性について論究する予定である.
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Causes of Carryover |
【現在までの進捗状況】に示したように,本研究の第一段階であるヒトを対象にした運動負荷実験を実施できなかった.その結果,次年度使用額が生じたため,補助事業期間の延長を申請し,その承認を得た.2024度にはヒトを対象にした研究を開始し,翌年度以降の動物モデルを用いた研究に展開する.これまでに請求した助成金の残額2024年度以降に繰り越し,承認された延長期間に全て使用していく計画である.
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