2023 Fiscal Year Annual Research Report
エリート・パラスポーツの功罪の検討―パラスポーツを通した共生社会の成熟に向けて
Project/Area Number |
20K11362
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内田 若希 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (30458111)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 顕在的態度 / 潜在的態度 / パラアスリート |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では、多様性を認め合う社会の構築に向けて、物理的・制度的な障壁を除去・改善するための施策が推進され、障害者が社会に受容されるようになってきた。しかし、それは表層的な変化に過ぎず、彼ら・彼女らに対する回避的行動や攻撃などの差別は今も残存している (栗田, 2015)。「誰もが互いに尊重して支え合い、多様な在り方を相互に認め合える社会 (共生社会; 文部科学省, 2012)」の実現が謳われて久しいが、その実現にはいまだ遠く及ばないのが現状である。 昨年度は、身体障害者およびパラアスリートに対するイメージ (態度の認知成分) と身体障害者との交流態度 (態度の行動成分) に着目し、検討を行った。しかし、昨年度の研究は、自己報告による顕在的態度のみを扱った。顕在的態度とは、自己報告による意識的な回答で測定される態度のことである。一方、潜在的態度とは無意識下に潜む態度のことであり、障害者との交流時に偏見や差別に基づく不適切な行動を無意識に表出させる源泉となる (小川, 2022; Wilson et al., 2000)。そこで、本年度は、昨年度の研究成果の課題を踏まえ、顕在的態度のパラアスリートに対するイメージと身体障害者との交流態度の関連を、潜在的態度を含めて再考することとした。そして、身体障害者に対する潜在的態度の調整効果を検証することを目的とした。現在は、共変量の影響を除外した分析を遂行し、全体のアウトラインを把握するところまで分析した。その結果、東京パラリンピックを興味を持って観戦した者において、ポジティブな顕在的態度が確認された一方で、観戦の有無や興味の有無に関わらず、潜在的態度はネガティブなまま残存していることが明らかになった。
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