2022 Fiscal Year Research-status Report
スポーツカウンセリングによるアスリートの心身統一的成熟プロセス
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20K11369
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
武田 大輔 東海大学, 体育学部, 教授 (10375470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋葉 茂季 国士舘大学, 体育学部, 講師 (30708300)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | こころとからだのつながり / 体験された身体 / スポーツカウンセリング / 臨床スポーツ心理学 / パフォーマンス心理臨床学 / 競技 / アスリート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアスリートへの心理支援のひとつであるスポーツカウンセリングの実践が基盤となっている.スポーツカウンセリングの経過において,アスリートの内界の変容とそれに関わる身体への気づきに注目し,実践から得られたアスリートの語りの資料を用いて臨床学的視点からの考察を試みることが目的である.すなわち,スポーツカウンセリングによるアスリートの成熟プロセスを精緻することである. 本研究資料は実践から得られる.心理支援の専門家と支援を受けるアスリートとの間において起こる出来事を実践者の記録から読み取ることとなる.これは心理臨床実践の基本的方法論である.研究開始当初の2020年春頃に,新型コロナウイルスの蔓延が本格化した.しかし,研究遂行に関わるアスリートへの心理支援は支障なくこれまで実施された.実践から得られた資料は,事例検討を通じた分析が施された.この事例検討は心理臨床実践における実践の評価に関係するが,同時に研究方法の役割も担う.この事例検討会を複数回行い仮設モデルの検証を行った.これまでに,アスリートの体験を内外の方向性の視点から捉えることについては,内奥-外界の軸を類心的無意識の表象である“心と身体のあいだ”というキーワードでさらに探求することで研究課題を進展させてきたが,さらに心身調和段階における自我の様相について,東洋的独自性を見出すきっかけができた.すなわち無の概念が関わる自己形成である.これを課題とし西洋的視点からの考察を加えるため,次年度は欧米の実践家との討論を計画することとした. また国際学会等にて成果を発表した.本研究で対象とする心理サポート実践の特徴である内界のイメージを扱い,身体表現系の活動を行う者の過去の回顧資料から自然発生的に生じるイメージに対して臨床学的に解釈を試み,自身の自己形成に新たな意味を見出す取り組みを発表した.ポスター発表部門の優秀賞を受賞した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね,計画通りに進捗している.研究資料を得るためのスポーツカウンセリング実践が順調に実施されたため,必要な資料を得ることができた.また,分析の根幹となる事例検討会を実施することができ,多角的な視点から議論されている. 2020年度,2021年度の各国際・国内学会の参加はオンラインとなった.そのため,研究発表からの情報収集は実施できたが,専門家や研究者らとの直接的な情報交換ができなかった.しかし,2022年度には国際学会に対面で参加し,成果の一部を発表することができた.また,心理サポート実践を行う外国人研究者とも情報交換を行うことができた. 新型コロナウイルスによる影響で2020年度に実施できなかった研究補助の短期雇用は2021年度,2022年度は計画通りに遂行できた. 以上のように3年計画の3年目まで研究の遂行においては順調に進めることができた.さらには西洋的視点からの考察の機会を2023年度に得たため,本研究計画を1年延長する発展的決定を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には研究計画の変更はない.スポーツカウンセリングを実施し,資料を得て,事例検討会を実施することが基本となる.それに関連して,専門家による助言を受けること,各種学会に参加し情報収集ことも計画の通りである. 先に述べたように2022年度は最終年度であったが,さらなる発展の可能性を見込み,2023年度への延長申請を行った.自我の様相の西洋と東洋の違いを念頭に,身体活動を通じた自己形成といったこれまでの自己形成に新たな知見を見いだせると期待できる.この国際的な研究活動への発展に加えて,いくつかの本研究テーマの課題も整理した.ひとつは,学際的な軸として,体育・スポーツ科学領域におけるスポーツ心理学以外の専門家との交流である.特に,本研究で採用している臨床学的方法論については,領域を超えた課題でもあるため共有していきたい.さらには,本研究テーマは心理サポート実践に寄与するものであるため,次世代の実践者および研究者を育成する視点も盛り込んだ.研究活動グループの拡大を意識し,推進する予定である. 以上のように,学際,国際,世代継承の3軸から研究テーマの深化を目指す.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症によりリモート開催となった学会への参加費と,研究補助の謝金が当初計画より減ったことが理由である.国際的な専門的知識を得る機会を得たため,識者への謝金や交通費として使用する予定である.
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