2020 Fiscal Year Research-status Report
What is the trunk stability mechanism?
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20K11377
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
清水 卓也 中京大学, スポーツ科学部, 教授 (60273223)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腹圧 / 体幹固定 / 大腿筋膜張筋 / 電気筋刺激 / 2関節筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、新型コロナ感染症の影響で、春学期に大学キャンパスが閉鎖され、実験を行うことができなかった。腹圧測定器と体幹回旋力測定器は7月に購入設置された。ある程度のパイロットデータを収集できたので、腹圧と体幹固定に関する人を対象とした研究の倫理申請書を作成中である。 2020年度の秋学期以降にはキャンパスに登校することが許可されて実験を行うことができた。秋学期に行った実験を以下に述べる。①「大腿筋膜張筋の収縮は膝屈曲荷重位で股関節内転を生じさせる」は、2関節筋である大腿筋膜張筋の収縮が、経験的に膝関節屈曲位で股関節内転、膝外反を生じるのではないかとのことで立案された。すでに実験を終了し、データ解析も終了し、大腿筋膜張筋に対する単独電気刺激では膝関節屈曲立位において、股関節を外転させることなく、内旋、膝外反、膝外旋が生じることを明らかにして論文執筆中である。②「腹臥位股関節伸展筋力に対する腹直筋エクササイズの即時効果」の実験は、腹直筋の収縮が、体幹の運動制御に影響し、体幹-大殿筋の運動連鎖を障害して、見かけの大殿筋の実効筋出力が低下するのではないかとの仮説のもとに行っているが、コロナ禍で対象数が集まらず次年度に繰越となっている。③「大腿筋膜張筋の収縮が膝屈曲 20 度荷重位の下肢アライメントに与える 影響」は、実際のACL損傷が詳細なビデオ解析により膝関節屈曲20度で生じるというエビデンスをもとに、大腿筋膜張筋に単独電気刺激を与えて、膝外反、膝外旋が生じるかを、VICONを用いてデータを収集する予定であり、すでに2020年度中に倫理委員会の承認が降り、対象の募集も終了して次年度4月中に実験を終了する目途がついている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、①骨盤から起始する二関節筋である大腿筋膜張筋の働きが、open kinetic chainとclosed kinetic chainで異なることを示すこと、②フロントプランクの姿勢における腹圧が腰椎の前弯や後弯と関連することを示すこと、③体幹固定と大殿筋収縮の運動連鎖が腹直筋の筋力強化トレーニングで阻害されることを示すことを目標とした。 しかし2020年度は新型コロナ感染症による春学期のキャンパス閉鎖で、研究対象者が募集不能となった。秋学期からは対面授業が再開され、感染予防に留意しながら、①の大腿筋膜張筋に関する人を対象とした研究を終了させることができ、さらに次の追加研究についても年度内に倫理申請書類を通過させ次年度早期にデータ収集を終了する見込みとなっている。しかし③の体幹固定と大殿筋の筋出力に対する腹直筋トレーニングの短期効果に対する研究は、対象が学生で対象者の募集に至らず、次年度に持ち越しとなっている。②の研究に使用する研究機器については、直腸内圧測定器が夏に大学に導入されている。これらの機器の本格的運用は2021年度からの予定となり、2020年度はパイロットデータを収集しつつある。倫理申請書はほぼ完成しており、次年度早期から人を対象とする研究を開始できる体制が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
腹圧と体幹固定の関係に関する研究に関しては、①フロントプランクの姿勢で腰椎の前弯位、中間位、後弯位で腹圧を測定する予定である。従来は腰椎の前弯で腹圧が最も高くなると予想していたが、パイロットデータでは後弯で最も高くなるという結果が得られている。我々の想定している体幹固定のメカニズムについては若干の修正が必要となっている。修正点は「腹圧は高いほど体幹安定性に寄与するわけではなく、有効な腹圧を生じさせる筋はいわゆるglobal筋を除いたものである」というもので、これに従って次の研究計画をたてることとしている。また②体幹の回旋力と腹圧の関係性を測定する予定である。これについては体幹の回旋に直接関わる、外腹斜筋と内腹斜筋の表面筋電図の情報を得ながら測定し、腹圧と内腹斜筋・外腹斜筋の筋電図のRMS値の関連性を検討する予定である。②についても、腰椎前弯、中間、後弯での条件をつけた新たな研究も年度内に終えることを目標とする。加えて、③体幹回旋に関して、条件なしとADIM(abdominal draw-in maneuver)の条件で体幹回旋力、腹圧、内腹斜筋・外腹斜筋の筋電図のRMS値を検討し、ADIMの体幹回旋力に対する有効性を明らかにする予定である。我々の仮説は、「ADIMは体幹回旋力では、対照群に対して劣り、体幹の回旋安定性では有効に働かない」というものである。更に加えて、④体幹を安定化させる腹圧を形成する障害因子は、臨床経験からある程度特定しているが、これを科学的に明らかにする研究も、できれば次年度から開始する予定である。 体幹と大殿筋の運動連鎖に対して腹直筋の筋力強化訓練が障害となる現象についての研究は、新型コロナ感染症の状況が改善し次第、対象を募集し研究を終了させる予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度は、新型コロナ感染症により春学期は大学キャンパスが閉鎖され、人を対象とした研究の実施が不可能となり、実験計画が遅れた。また大学の指示により、学会への出張が実質的に禁止されたため旅費の使用がなかった。以上の理由で一部の予算が執行できなかった。 また、実験系で最も重要な腹圧測定に使用するカテーテルが、使用状況によっては比較的断線しやすいことが判明したので、ある程度の予算を残し、2021年度中に、実験系が中断しないように価格が50万円程度する予備のカテーテルを購入する費用に回す予定である。
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Research Products
(2 results)