2022 Fiscal Year Research-status Report
運動離れの脳機構解明に向けた動物モデルの確立と扁桃体の関与の検討
Project/Area Number |
20K11393
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
井上 恒志郎 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 講師 (30708574)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ストレス感受性 / ストレス反応 / 回避行動 / 運動条件 / 脳領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ストレス感受性が高い個体(BALB/cマウス)では、強制的な運動(トレッドミル走運動、TR)は強度に関係なくストレス反応を惹起する嫌悪刺激となり(課題1)、その運動経験はその後の扁桃体依存的な運動回避行動に繋がるが(課題2)、自発的な運動(輪回し運動、WR)はストレス反応を惹起しないため、運動回避行動が誘発されない(課題3)という仮説を、一般的な個体(C57BL/6マウス)との比較から検証している。 前年度までに、BALB/cマウスでは、TRが強度に関係なく運動ストレス(血漿コルチコステロンの分泌促進と視床下部室傍核の活性化)を引き起こす一方、WRではこれらのストレス兆候が見られないこと、C57BL/6マウスでは、運動ストレスが強度依存的に惹起され、高強度TRのみが運動ストレスを惹起することを明らかにしている(課題1と3)。これらの結果は、今年度9月に開催された第77回日本体力医学会大会で報告した。また関連内容の情報収集及び成果報告のために、国内学会とフォーラムに参加した。 現在は、上記した課題1と3について、これら動物種や運動条件(強度と様式)によってストレス反応が異なる背景にどのような神経機構あるいは脳部位が関係しているか明らかにするために、ストレス調節に関連する21の脳領域(側坐核や分界条床核など、Numa et al., 2019)の神経活動を網羅的に解析し、比較検討している。実験条件と対象領域が多く、神経活動の解析に時間を要しているが、年内に解析を終了し、学会発表や論文化を目指す。課題2についても、並行して進め、年度内の実験終了を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究そのものは目的や方法に大きな変更がなく順調に進行している。しかし、所属大学の業務において急遽欠員が生じ、代役として業務分担することになり、そちらに想定以上の時間を要したため、研究全体の遂行に遅延が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の方針に大きな変更点はないため、研究を完遂が第一の目標となる。課題1と3において現在進めているストレス関連脳領域の神経活動の解析については、ImageJを用いて半自動で細胞数のカウントを行う手法を導入するなど、精度を担保しながら解析作業の効率化を図っていく予定である。課題2については、運動回避行動を評価するための新たな行動評価テスト及びプロトコルの確立が課題となっているため、まずは現在試行している内容で妥当性や再現性の検証作業を進めていく。
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Causes of Carryover |
所属機関における欠員に伴う業務の負担増が原因で研究の進行に遅延が生じ、予定していた研究がすべて遂行できなかったため、未実施の実験に当てていた予算の繰越が生じた。研究の内容自体は計画通りに進行しているため、未実施の実験を次年度内に早急に完了する。また、成果報告のための論文投稿費や英文校正費にも活用していく予定である。
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