2022 Fiscal Year Research-status Report
運動意欲の社会的な伝搬における中脳ドーパミン―線条体系の役割解明
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20K11396
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
山中 航 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (40551479)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 運動意欲 / 社会的運動ケージ / ラット / 回転ホイール / 同期 / 線条体 / ドーパミン / 相互相関解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
適度な運動が我々の健康の維持・増進に効果的であることはよく知られているが、運動習慣者の割合は30%程度であるといわれている。運動意欲の維持・向上をもたらす方法の一つとして「意欲の高い他者と一緒に運動する」ことが挙げられるが、なぜ他者の存在や行動によって自身の運動意欲が触発されるのか、その脳神経メカニズムは明らかでない。 2022年度においては、これまで明らかにしてきた社会的運動ケージにおける2匹のラットの運動タイミングの同期についてよりその詳細を明らかにするため、片方のラットの運動量を実験的に操作したときに運動意欲伝搬がどのように変化するか調べた。具体的には、低運動意欲モデルとして高脂肪食摂取ラットと通常食ラットを用いて比較検討した。社会的運動ケージでラットを4週齢から高脂肪食または通常食で3ヶ月間飼育した。その結果、ケージ間の仕切り板を黒いアクリル板にしたとき(Single条件)、高脂肪食ラットの運動量は通常食ラットの運動量よりも顕著な減少を示した。さらにケージ間の仕切り板を金網にしたとき(Pair条件)、ペアとする動物を通常食ラットとした場合は2匹のラットの運動開始の同期率は上昇するが、高脂肪食ラットの場合はそのような運動開始タイミングの同期率は通常食ラットと比べ顕著な減少を示した。これらの結果から、高脂肪食摂取によって、内的な運動意欲が減弱するだけでなく、他者の運動を観察することによって惹起される外発的な運動意欲もまた減弱することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度の進捗状況として、行動学的データの信頼性を高めるために高脂肪食による低運動意欲モデルの動物を用いた行動実験を追加したため、神経活動の記録の準備は達成したが、実際に記録するまで到達しなかったため「やや遅れている」と評価した。2023年度に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
運動意欲と神経活動との関係性に迫るためにも、まずは行動学的なデータの検証が重要である。2023年度は最終年度となるが、これまで示してきた社会的運動ケージによる運動タイミングの同期という頑健な現象に基づいて神経活動との関係性を調べていく予定である。 具体的には、計画書に記載のように、社会的運動ケージに入れた2匹のラットの運動タイミング同期時の神経活動計測ならびにドーパミン受容体作動薬注入によって同期現象がどのように変化するか調べる。運動タイミングの同期現象は24時間という比較的長い時間スケールの中で生じる現象であり、神経活動の計測中にどの程度の頻度で同期現象が生じるかという点が課題である。この点についてはSingle条件またはPair条件の後にラットの脳を摘出し、c-Fos発現を比較するなど別の方法を検討する必要があるかどうかも併せて検討する。
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Causes of Carryover |
頑健な行動データ取得のために実験を追加する必要性により計画が遅延したため、当該助成金が生じた。翌年度分として請求した助成金については、撮像したビデオデータの解析を手伝ってもらうための人件費(アルバイト謝金)に充てる予定である。
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