2023 Fiscal Year Annual Research Report
運動意欲の社会的な伝搬における中脳ドーパミン―線条体系の役割解明
Project/Area Number |
20K11396
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
山中 航 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (40551479)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 運動意欲 / 社会的運動ケージ / 運動意欲伝搬 / 相互相関解析 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
運動意欲の維持・向上をもたらす方法の一つとして「意欲の高い他者と一緒に運動する」ことが挙げられる。しかしながら、なぜ他者の運動意欲に自己の運動意欲が触発されるのか、その機序は明らかでない。この課題にアプローチするため、本研究課題において、動物(ラット)を対象として、社会的インタラクションが運動意欲に影響するかどうか調べることができる行動実験モデルを確立することができた。ケージ間の仕切り板を変えることで「社会的接触度」を調節することができる社会的運動ケージを用いて、他者の行動が観察者の運動意欲に影響を及ぼすかについて検討した。4週齢のLong-Evansラットを用いて、1週間毎にケージ間の仕切り板を金網(ペア条件)または黒アクリル板(単独条件)に交換し、4週間飼育した。その結果、条件間で運動量に有意差は見られなかった。単独条件では個体の運動量に大きなばらつきが見られたが、ペア条件ではこのばらつきが小さくなる傾向が観察された。この結果は、運動意欲の伝搬は高運動意欲ラット→低運動意欲ラットに対してのみならず低運動意欲ラット→高運動意欲ラットに対しても生じる可能性が考えられる。また個体間の運動タイミングについて、相互相関解析を用いて検討したところ、金網条件においてのみ、二匹の運動タイミングが同期することを観察した。このような運動意欲伝搬が視覚入力によるかどうか調べるため、ケージ間の仕切り板を透明アクリル板にしたところ、運動タイミングの同期現象は生じなかった。このような結果は単なる視覚入力ではなく、嗅覚や触覚を含む身体接触が個体間の運動タイミングの同期に必要であることを示唆する。
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