2020 Fiscal Year Research-status Report
Detection of nitric oxide in human blood using atomic layer materials such as graphene
Project/Area Number |
20K11404
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤元 章 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (90388348)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西脇 雅人 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (10635345)
小池 一歩 大阪工業大学, 工学部, 教授 (40351457)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | グラフェン / 酸化インジウム / ガスセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェンを用いたガスセンシングでは,グラフェンの表面に酸化性ガスもしくは還元性ガスが吸着することにより,グラフェンがそれぞれp型化,n型化し,それに伴う抵抗変化によってガス検知できる.本研究ではガスセンサの高感度化を目的として,半導体ガスセンサの材料の一つである酸化インジウムをグラフェン上にALD(Atomic Layer Deposition)法で成長させた試料を用いた.また,ALDの平坦膜ではなく酸化インジウムナノ粒子を用いた方法についても検討した.デカン酸インジウムを前駆体とする熱分解による化学合成を行い,数十nmサイズのナノ粒子が得られた.この酸化インジウム3ナノ粒子を市販のCVD(Chemical Vapor Deposition)グラフェン上に修飾した試料でガスセンシング特性を評価する実験を進めた. 密閉容器内で測定試料を一定温度に保ち,マスフローコントローラとシーケンサを用いて200 sccmのガスを一定時間流入した.検知ガスとして一酸化窒素を流入したとき,air gas中では,二酸化窒素に変化していると考えている.二酸化窒素がp型グラフェンに吸着したとき,本来,グラフェンの抵抗は減少する.n型の酸化インジウムに吸着すると,n型の酸化インジウム中の電子が吸着した二酸化窒素に奪われるため抵抗が増加し,酸化性ガスの吸着応答を示すと予想される.ALDの酸化インジウムをグラフェン上に成長させた試料では,二酸化窒素ガスを検知することにより,2桁以上の抵抗増加が観測された.一方,酸化インジウムナノ粒子をグラフェン上に修飾した試料では,グラフェン単体の場合と比べ,二酸化窒素ガスの検出感度が逆に悪くなった.ラマン散乱測定によるGピークと2Dピークの相関プロットも解析し,ガスの検出感度の悪化について現在,原因を検討している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では2つの課題を挙げ,課題1-原子層薄膜のガスセンシングと課題2-原子層薄膜で作製したポテンショメトリックセンサーを用いたヒトの血液中の一酸化窒素の検出としている.令和2年度では,課題1の原子層薄膜のガスセンシングとし,原子層薄膜を用いて, 一酸化窒素吸着により電気抵抗を大きく変化させ,一酸化窒素の検出感度を顕著に増大させることを目標に研究を進めた. 令和2年度は,グラフェンに酸化インジウムを積層させることにより,検出感度の増大を試みた.酸化インジウムとして,ナノ粒子を用いた場合,ALD薄膜を用いた場合の2種類を検討し,ともにガスのセンシング実験を行うことができ,ALDの酸化インジウムをグラフェン上に成長させた試料では,二酸化窒素ガスを検知することにより,2桁以上の抵抗増加が観測され,順調に研究を進展させることができた.この内容について,日本物理学会の第76回年次大会や日本材料学会半導体エレクトロ二クス部門委員会第2回研究会で,学会発表を行った. 今後の研究の展開として,課題2の血液中の一酸化窒素の検出を進めていくことになるが,手始めに,グラフェン表面にイオン液体を塗布したときの電気測定を試みた.本研究では,イオン液体には,1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-ethyl-3methy-limidazolium) (EMIM-TFSI)を用いた.イオン液体を塗布すると,グラフェンのキャリアが正孔から電子に変化することをHall測定により確認した.イオン液体塗布後のグラフェン表面が,イオン液体中の陰イオンから電子がグラフェン表面上に供給された可能性があると考えている.この課題についても,課題1と同様に十分に進捗させることができ,今後,さらなる研究の展開が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
「原子層薄膜で作製した半導体デバイスを用い,ポテンショメトリックセンサーを開発し,ヒトの血液中の一酸化窒素を簡便にリアルタイムでモニタリングすることが可能か」が本研究の問いである.この課題を解決するために,最初の研究として,課題1-原子層薄膜のガスセンシングを挙げた。今後は,一酸化窒素をはじめとするガスの定量的な実験データの解析ができるように,グラフェンなどの原子層薄膜の抵抗変化とガス濃度の関係は単分子吸着を仮定したLangmuirの等温吸着式に従うと仮定し,解析を進めていく.また,グラフェンと二硫化モリブデンを積層させたファンデルワールスヘテロ接合デバイスを作製し,その接合のショットキー性を利用して,一酸化窒素吸着により電気抵抗を大きく変化させることを試みる.これは後に,血液中の一酸化窒素を検出するときの研究のベースになると考える. 一酸化窒素は液体中では,硝酸イオンや亜硝酸イオンとして存在していると考えられる.血液を使用する前に,液体中のこれらのイオンを電気的に検出することが次の目標となる.このために,拡張ゲート電界効果トランジスタ(EGFET)を用いた測定方法を開発する.具体的には,溶液中の参照電極と拡張電極間に生じた電位変化を出力することができるソースフォロワ回路を構成する.拡張電極には市販のn-MOSFETを接続させ,n-MOSFETのゲート電圧が変化するため,この変化を出力させることができるはずである.溶液中の硝酸イオンや亜硝酸イオン濃度が変化すると,溶液のpHが変化するため,EGFETを用いて電気的に出力させることを試みる.
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍のため,出張の機会が激減し,科研費に関しても旅費の項目を全く使うことがなかった.同様に,大学の学内予算に関しても,旅費を使用する機会が激減したため,消耗品を購入するなどの予算に充てることができた。この影響もあり,科研費を用いた物品購入を多額に行わなくても,研究を遂行することができた.教育のdutyが,オンライン授業の実施等のため,多くの時間を割く必要が出てきたため,研究推進のための多くの実験を行うことができず,そのため,物品費が残ってしまったとも言える.次年度は,新しい測定方法の開発に取り組む予定であり,いろいろな物品を購入することになるので,予算を十分に使い切る予定である.
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