2020 Fiscal Year Research-status Report
Does acupuncture or electro-acupuncture inhibit of force-matching errors after eccentric exercise attributed to muscle soreness?
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20K11405
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
寺田 和史 天理大学, 体育学部, 教授 (40454798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中谷 敏昭 天理大学, 体育学部, 教授 (60248185)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 鍼 / 鍼通電 / 力調節能 / 遅発性筋痛 / 筋疲労 / 筋紡錘 / 伸張反射 / 立位姿勢制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
力調節能の低下は、慢性的には加齢や不活動によって起こるとされ、急性的には筋疲労や遅発性筋痛(Delayed Onset Muscle Soreness: DOMS)によっても生じる。DOMSが筋感度調節能を低下させる原因として、脊髄α運動ニューロンプール(Alpha Motor Neuron Pools:αMNP)の活動変化によるゴルジ腱器官や筋紡錘の働きの変化が関与していると考えられている。力調節能の低下が仮に足関節底屈筋群に生じた場合、スポーツ活動、立位姿勢制御、自動車のペダルの調節などの日常生活動作の円滑な遂行を妨げる。 一方、鍼及び経皮的電気刺激は侵害(痛み)受容器や感覚器を介して様々な作用を生じさせるが、中でも、鍼等の刺激が筋紡錘に及ぶことで、筋の反射を抑制するメカニズムの存在が示唆されている。鍼または鍼通電刺激は筋緊張の緩和をもたらし、筋の凝りや張りを和らげるとされ、鍼または鍼通電刺激が伸張反射を抑制することも示されている。さらに指などへの鍼及び通電刺激は、振動誘発性の把持及び指屈曲反射を抑制することも明らかとなっている。これらの現象は、伸張反射の発現強度に影響を与える脊髄αMNPの活動に影響を及ぼすことにより引き起こされると考えられている。 本研究では、これらのような鍼や鍼通電のαMNPへの変調作用は、DOMS等による力調節能の乱れを正常化する、あるいは回復させることに寄与する可能があるのではないかと考え、DOMSにより実験的に筋感覚の乱れを生じさせた際の、力調節能に及ぼす鍼または鍼通電刺激の効果を明らかにすることを目的として、研究を行うこととした。 本年度は、COVID-19流行の影響によりほとんど当初の計画が進められず、主に先行研究の探索や本研究で用いる測定システムの確立など研究の準備に関することを出来る限り進め、次年度の研究が円滑に遂行できるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はCOVID-19流行の影響により、予定されていた研究計画がほとんど進められなかった。本研究は対象者の募集を行い、一定の条件による身体運動を伴う介入、及び数種類の測定を頻回に行う必要があり、それには毎度の直接的なヒトとヒトとの接触が避けられないことから、研究期間開始当初からデータの収集等については行えない状況となった。 また、本研究課題に関する研究成果について、学会での発表等を計画していたが、旅行や移動自粛などによりそれらの活動についても行えなかった。対面に代わってオンラインでの発表機会を設ける学会もいくつかみられたが、上記のように本研究課題に係るデータ収集がままならなかったこともあり、予定していた発表の機会を得られない場合もあった。 一方で、本研究課題に係る資料の収集や、測定に使用するシステムの構築について、出来るところから進めることとなった。特に、力調節能の評価に用いようとしている測定機材の選定及び調達や、力調節課題を提示するソフトウェアの開発については、業者との間で検討を重ねるなどして概ね完了することができた。具体的には、足関節底屈筋力を測定する機材とAD変換システムの調達、及び、視覚フィードバックによる力調節能の評価ができるソフトウェアの開発と調達を行うことができた。ただし、本システムについては未だヒトを対象とした予備的な測定、テスト等が十分に行えていないため、次年度の初めはまずそれらのことができるように、COVID-19流行の状況や感染防止対策などの方法を鑑みながら、速やかに調整をしていく必要がある。 本年度は、当初計画通りには行かなかったものの、活動制限のある中で出来るだけ研究が進められるように最大限の工夫を行った。しかしながら、上記のようにヒトが参加する内容の検討がほぼ出来なかったことから、研究の進捗としてはやや遅れている状況であると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、COVID-19流行の影響により本年度で進められなかった計画について、早急に対応する。具体的には、足関節底屈における力調節能の評価法を確立するために、今年度で開発した装置(測定システム)について、ヒトを用いて得られるデータの信頼性や再現性を検討する。次いで、当初予定の計画についても遂行する。すなわち、以下の研究計画について実施できるよう検討する。 対象を「鍼(通電)群」と「無刺激群」に、年齢や体格、筋力などが偏らないように階層化したうえで無作為に割付ける、無作為化比較対照試験を実施する。上記の両群に20度の傾斜板上での踵挙げ運動(エキセントリック運動:ECC運動)を行わせ、実験的にDOMSを発生させる。鍼(通電)群には、力調節能の経時変化をみるために、刺激(介入)の前後における数度の時機において、特別な装置を作成し、それを用いて視覚フィードバックによる片側の等尺性足関節底屈トルクを目標値に合わせる課題を行わせる。さらに、重心軌跡測定器により、立位姿勢制御の評価を行う。鍼(通電)は、DOMSが発生中とみられるECC運動の24時間後に行う。鍼刺激群には、片側の当該筋への2Hz・20分の低周波鍼通電を行う。具体的な刺激点は、委中穴(BL40)と承山穴(BL57)とする。無刺激群は、鍼刺激と同時間による安静をとる。各時点での観察データをもとに、2群を比較する。結果として、鍼(通電)群は無刺激群と比較して、DOMS時の足関節底屈における力調節能や立位姿勢制御能力の低下が抑制されると予想する。 今後も研究活動が、COVID-19流行の影響を受けることが予想されるものの、社会の状況やタイミングを見計らい、且つ、感染拡大防止の方法を考慮しながら、出来る限り当初の計画を推進していくつもりである。また、研究成果が得られた場合には、積極的に関連学会等で発表を行うことも考えている。
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Causes of Carryover |
COVID-19流行の影響により研究計画の大幅な変更を余儀なくされ、当初予定されていた学会出席による研究動向調査などの旅費、測定対象である研究協力者への謝金、その他研究活動に係る消耗品などの諸経費が生じなかった、あるいは大幅に減額されたことが、次年度使用額が生じた主な理由となる。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画については、COVID-19の流行の状況を勘案しながら、今年度実施予定であってできなかった計画を順次遂行していくことで、予定される使用額に近い額の使用が見込まれる。具体的には、測定などを行うことによる研究協力者への謝金の発生や、今年度購入していない設備備品などの調達、消耗品の購入、論文投稿や学会発表等の研究成果発表に係る経費などがそれにあたる。
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Research Products
(5 results)