2020 Fiscal Year Research-status Report
チームスポーツにおける競技力の形成と向上を支える仕組みの究明
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20K11415
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
内山 治樹 筑波大学, 体育系, 教授 (00168717)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 感性 / チーム / コーチ / 競技力 / 価値判断基準 / 規範的原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,すでに明らかにされている「競技者」(内山,2014)と「チーム」(内山,2015;2019)に加えて,競技力を規定する上で最も重要な役割を担う「コーチ」の価値判断に関する能力である「感性」を構成する価値判断の基準と規範的原理の理論化を行いつつ,最終的に,競技者,チーム,コーチの相互作用から生成されるチームスポーツにおける競技力の形成と向上を支える深層の仕組みを究明することであった。 この目的を達成するために,3年計画の初年度は,当初,日・独・米のチームやバスケットボール,そして,感性に言及する文献を蒐集し,それらの精読を通じて,「コーチにおける価値判断の基準と規範的原理」の定式化を図ることを予定していた。しかしながら,2年目に予定していた「競技力の形成と向上を支える深層の仕組み」の学的基礎づけを今一度精査することが不可欠と判断し、今年度は初年度と2年目の課題を入替え,その成果を英語論文(査読有り)として誌上発表することとした。 その内容は,スポーツ・コーチングはこれまで競技者やチームのパフォーマンス向上に重要な役割を果たしてきたものの,現状はいろいろな理論が様々な語彙を用いて使用されているため,その根本原理は曖昧なままであることから,コーチングの普遍的な意味とメカニズムの内実を再検討したものである。考察の結果,コーチングは「競技者をコーチが勝利の実現に向けて先導すること」と再規定され,「勝利」を目標とする実践過程が作動し継続していく中で,身体諸能力の顕現化を目標とする過程と密接に連動する「二重作動」というメカニズムから成り立っている,と結論づけた。本研究の成果は,コーチングの理念性に関する根本原理として,コーチングと呼ばれる現象に根源的な考えをもたらすことで,今後の研究を進めていく上で大いに貢献していくことになると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた初年度と2年目の課題は入替ったものの、研究全体としては概ね予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのチームスポーツを対象にした研究では,当該競技の個々に具象化する「スポーツ現象」の表層の可視的な複雑多様さに惑溺されることで,結果として,チームスポーツの成立・維持・発展の根幹を成す競技力についての共通認識は定立されてはいない。 この重大な問題を解決するために,本研究は,他のチームスポーツと比して最も複雑な特性を有するバスケットボールを対象に,競技者とチームに加えて,もう一人の重要な製作者でありながら未だ解明がなされていないコーチの行為指針の抉出を通して,競技者,チーム,コーチの相互作用から生成されるチームスポーツにおける競技力の形成と向上を支える深層の仕組みを究明しようとするものである。 今後の研究の推進方策として、次年度は、今年度予定していた「コーチにおける価値判断の基準と規範的原理」を抉出して定式化し、国内全国誌か国際学術誌の何れかに投稿する予定である。また、その作業と並行して、競技者、チーム、コーチという競技力の製作者における相互連関の「仕組み」を分析する作業を行い、最終年度には、「競技力の形成と向上を支える深層の仕組み」の学的基礎付けの分析と考察を終える予定である。 このような本年度以降の研究実施計画は、本研究の目的である、「すでに明らかにされている「競技者」(内山,2014)と「チーム」(内山,2015;2019)に加えて、競技力を規定する上で最も重要な役割を担う「コーチ」の価値判断に関する能力である「感性」を構成する価値判断の基準と規範的原理の理論化を行いつつ、最終的に、競技者、チーム、コーチの相互作用から生成されるチームスポーツにおける競技力の形成と向上を支える深層の仕組みを究明すること」の達成を十分可能にすると考えられる。
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Causes of Carryover |
3年間のテーマである「競技力」の形成と向上を支える深層の仕組みを究明していく上で不可欠な前提である「コーチング」の理念とメカニズムに関する論文(英文)は,当初の計画を次年次と入れ替えたものの採択された。 しかしながら,コロナ禍という状況において,予定していた国内外での学会発表は取りやめにせざるを得ず,加えて,日・独・米のチームやバスケットボール,また,「感性」に言及する文献の蒐集もままならず,その精読にも十分な時間を割けなかった。次年度は,今年度予定していた「コーチにおける価値判断の基準と規範的原理」の定式化を,早い時期に遂行する予定である。そのためにも,上記課題にかかわる文献のさらなる蒐集は不可欠であり,前倒し支払いは必要である。
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