2020 Fiscal Year Research-status Report
持久的運動効果の減弱化のメカニズム解明とその解決策
Project/Area Number |
20K11417
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
星野 太佑 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (70612117)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 骨格筋 / ミトコンドリア / PGC-1α / 筋収縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,冷却を伴う筋収縮が骨格筋のミトコンドリア生合成の因子に与える影響の解明を目的に研究をおこなった.Wistar系雄性ラットを常温群と冷却群にわけ,常温群は水, 冷却群は氷水の入った袋を用いて,下腿前部を3分間冷却した. その後, 前脛骨筋を20 Hzにて1秒間電気刺激, 1秒間休息を30回繰り返すプロトコルを1セットとし, これを10セット実施した. 筋温について, 収縮プログラム中,常温群では約30℃, 冷却群は約20℃を推移した.筋発揮張力を分析し,最大発揮張力と力積を算出した.その結果,2群間に各セットごとの最大発揮張力に違いはなかったが,冷却群の力積は,常温群の力積よりも有意に高値を示した (p < 0.05). 力積が大きかったことから,冷却が仕事量を増加させたと言える.さらに,電気刺激プロトコル3時間後の前脛骨筋を摘出し, Real time RT-PCR法を用いて,peroxisome proliferator-activated receptor γ coactivator-1 (PGC-1)αのmRNA発現量を測定した. その結果,PGC-1αのmRNA発現量は, 電気刺激による主効果はみられたものの, 冷却群の電気刺激群は, 常温群の電気刺激群より有意に低値を示した. 以上の結果から,冷却は筋収縮の仕事量を増加させるにも関わらず,ミトコンドリア生合成のマスターレギュレーターであるPGC-1αのmRNA量の増加を減弱させることが明らかとなった.よって,冷却が持久的運動の効果 (ミトコンドリア生合成)を減弱させる可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究実績の概要から,冷却を伴う筋収縮は,仕事量を増大させるが,筋収縮によるPGC-1αの増加を減弱させることが明らかとなった.本研究課題の目的は,運動による持久的能力の向上が減弱するメカニズムの解明である.冷却をおこなうと筋収縮によるPGC-1αの増加が抑制されたことから,そのメカニズムを解明することは本研究の目的の達成に近づくと考えられる.先行研究によっては,冷却が筋収縮による応答にポジティブに働くことを報告している論文がいくつかある.そのような先行研究を参考にしながら,筋収縮や冷却の方法を決定するための予備実験をおこなった.本研究結果がどのような条件での限定的な現象であるかどうかの可能性を確認しながら,研究を進めていく必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,冷却による筋収縮がどのようにして,筋収縮による応答を減弱させたのか,メカニズムを検証する.今年度と同様の冷却,筋収縮プロトコルを実施した直後の骨格筋の代謝物濃度,シグナル分子の活性化を測定する.代謝物は,筋中乳酸濃度,筋グリコーゲン濃度を測定する予定である.シグナル分子は,AMPK,CaMKII,p38MAPKのリン酸化を測定する予定である.
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症予防のため,登学を自粛せざるを得ない期間があり,実験を予定通りできなかったため,次年度使用額が生じた.
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