2021 Fiscal Year Research-status Report
持久的運動効果の減弱化のメカニズム解明とその解決策
Project/Area Number |
20K11417
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
星野 太佑 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (70612117)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | AMPK / PGC-1a |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度,冷却はミトコンドリア生合成のマスターレギュレーターであるperoxisome proliferator-activated receptor γ coactivator-1 (PGC-1)αのmRNA発現量の筋収縮後の増加を減弱させることを明らかにした.今年度はその分子メカニズムについて,シグナル分子のリン酸化に着目し検証した. Wistar系雄性ラットを常温群と冷却群にわけ,常温群は水, 冷却群は氷水の入った袋を用いて,下腿前部を3分間冷却した. その後, 前脛骨筋を20 Hzにて1秒間電気刺激, 1秒間休息を30回繰り返すプロトコルを1セットとし, これを10セット実施した. 筋収縮直後に両脚の前脛骨筋を摘出し,AMP-activatedprotein kinase (AMPK) calcium/calmodulin-dependent protein kinase II (CaMKII),p38 mitogen-activated protein kinase (p38 MAPK)のリン酸化をウエスタンブロッティングを用いて,測定した.また,筋グリコーゲン濃度と筋中乳酸濃度を生化学的に測定した.その結果,両群のAMPK,CaMKII,p38 MAPKのリン酸化は,筋収縮によって有意に増加した.さらに,冷却は,AMPKのリン酸化の増加を有意に減弱させた.しかし,CaMKII,p38 MAPKのリン酸化には,冷却の影響は見られなかった.また,筋グリコーゲン濃度の筋収縮による減少は,冷却により有意に抑制された. 以上の結果から,冷却は,筋収縮によるAMPKの活性化および筋グリコーゲン分解を減弱させ,PGC-1αのmRNA発現量の増加を抑制する可能性が示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究実績の概要から,冷却を伴う筋収縮は,筋収縮によるAMPKの活性化と筋グリコーゲンの分解を減弱させることが明らかとなった.本研究課題の目的は,運動による持久的能力の向上が減弱するメカニズムの解明である.よって,今年度の実験結果から,AMPKの活性化の抑制は,持久的運動による効果の減弱化に関連する可能性が示唆された.同様に,筋グリコーゲンの分解の程度が,持久的運動による効果に影響を与える可能性が考えられた.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで実施した研究により,冷却を伴う筋収縮は,骨格筋の持久的運動による効果を抑制する可能性が,一過性の運動後の検証により明らかとなった.しかしながら,冷却が安静脚にどのような影響を与えるのか,明らかではない.よって筋収縮を施していない脚に冷却のみ実施した場合,どのような影響があるのか確認する.さらに,現在一過性の運動後の検証にとどまっているため,今後は運動トレーニングと冷却を組み合わせることで,冷却が運動適応にどのような影響を与えるのか検証する.
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染対策により,参加した学会が遠隔開催となったため,旅費を使用しなかった.来年度開催される学会参加の旅費に使用する予定である.
|
Research Products
(2 results)