2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K11420
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
瀬戸 邦弘 鳥取大学, 教育支援・国際交流推進機構, 准教授 (40434344)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 応援団文化 / 無形文化財 / 利他主義 / 主客合一 / 構築主義 / 日本文化論 / スポーツ文化 / アーカイヴ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、昨年度に続き、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大により、国内においても長期に渡り緊急事態宣言が発出され、御存じのように密になる人の動きや地域間移動が大幅に制限された。その影響は大きく、学校における諸活動も例外なく大幅な制限を受け、応援団も大半の活動を自粛、停止せざるを得なかった。そのために、本課題においても調査に赴くことがほぼ叶わず、参与観察を旨とする研究の遂行は難しい状況であった。一方で、その時間を利用して、これまで蓄積した資料の検討・成果分析を行い、参与観察の再開に向け、新たな準備を行う事が出来たという意味では充実した一年だったとも言える。 また、分析結果を活かすために、今年度はシンポジウムや学会発表などの場に積極的に参加し、研究の深化と進化を図った。たとえば、日本体育・スポーツ・健康学会の依頼で、同学会第71回大会の「スポーツ文化研究部会【課題C】テーマ別シンポジウム/スポーツ文化の浸透戦略(1):文化の保存・流通の批判的検討から」へシンポジストとして参加した。本会では「無形文化財として応援団文化を保存する」を準備・発表し、ともに登壇した近接領域の研究者との意見交換を行い、また、フロアとの質疑応答を経て、本課題は深化したといえる。また、日本スポーツ人類学会第23回大会において「「文化」として位置づけられる応援団-無形文化財としての応援団-」を発表し、コロナ禍において応援団が実践するデジタルアーカイヴという新たな文化継承の在り方を報告し、その文化変容の具な分析・報告を行う事ができた。あわせて、本課題に纏わる書籍執筆の機会を得て、『スポーツ文化論』(みらい)の中で、応援団文化に関する論考を発表している。また、河北新報(宮城県)から応援団の歴史と文化に関する取材を受けて『河北新報2020年4月14日掲載』に応援団のジェンダーに関する記事が掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度は、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大やその影響により、日本国内においても緊急事態宣言が重ねて発出されるなど、人の物理的な動きが大幅に制限され、学校空間でも多くの行事が中止、自粛されるに至った。そのために、応援団文化の動態を対象とする本研究の遂行も大変厳しい状況にあったと言わざるを得ない。そもそも、本研究は全国に数多点在する応援団の参与観察による質的研究であり、その研究手法は現地調査によって担保されるものである。先述したように、一年を通して新型コロナ感染拡大が収束する事なく、2021年度は大げさではなく、日本中の応援団がほぼ通常の活動を停止をしていたために、本研究はその進捗に大きな制限を受けたと言わざるを得ない。一方で、これまでの調査成果の整理や分析、それらを学会において発表する事によって、調査の振り返りと新たな課題の発見がなされたと言え、その点は評価できる。これらの成果は、今後の研究活動に更なる深化を齎すと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
我が国においても3回目のワクチン接種が軌道に乗り、コロナ禍における混乱状態にも終焉、収束の光が見えてきたように感じている。2022年度は、2020、2021年度に参与観察を予定していた学校および応援団とも綿密に連絡を取りながら、更に連携を深め、社会の状況が好転次第、現地における研究調査が実施できるように準備を整えていく。また、特に2022年度には、研究成果の途中経過を社会還元してくために、5月に大学応援団の新入団員を対象に「無形文化財としての大学応援団」と題した講演を行う予定である。この講演では応援団文化が近代日本社会で、如何に構築され無形文化(財)として継承されるに至ったのか、そのプロセスに関して詳らかにする予定であり、応援団という未知の文化領域に踏み込んでいく新入生達にその独自の文化性について詳説する予定である。また、同月には台湾師範大学で実施される国際学会「2022年運動休閒與餐旅管理國際學術線上研討會」での研究発表も予定されており、国際的な枠組みの中での成果発信にも余念はない。その後は、学術雑誌に論文執筆を計画しており、さまざまな発表機会を利用して得た知見を基に、論考を完成する予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度はコロナ禍において、全国の応援団の活動が大幅に自粛され、また県を跨いだ移動や学校を訪問しての参与観察の実施が困難であった。そのため、予算の繰り越しが発生している。今年度は、かなり社会状況が改善される兆しが見え始めたので、昨年、一昨年できなかった研究調査(参与観察)を、訪問先と相談し、改めて計画・実施する予定である。
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