2020 Fiscal Year Research-status Report
内受容感覚の気づきと感覚運動制御に着目した身体所有感の包括的理解
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20K11423
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
渋谷 賢 杏林大学, 医学部, 講師 (30406996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中本 浩揮 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 准教授 (10423732)
畝中 智志 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 講師 (50822946)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 身体所有感 / 内受容感覚 / マインドフルネス / 心拍誘発電位 / 身体性自己意識 / 脳波 / ラバーハンド錯覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,(1)「私の身体は自己に属している」と感じる身体所有感(body ownership)変容の個人差を内受容感覚の気づきと感覚運動制御の観点から理解すること,(2)内受容感覚の気づきに対する心的介入(マインドフルネス)を実施し,介入前後の内受容感覚の気づき,身体所有感,感覚運動制御の変化を調べることである. 令和2年度は,コロナウイルス蔓延により実験の遅れを余儀なくされたが,脳波-心電図の同時計測によって,内受容感覚の気づき,身体所有感と深く関連する脳波成分である心拍誘発電位を記録する実験システムを構築できた.その後,この実験システムを用いた予備実験を実施した.予備実験では,健常被験者を対象に身体所有感が操作可能なラバーハンド錯覚中の心拍誘発電位の変化を検討した.被験者は,視覚遮断された自己の手と眼前の偽の手(ラバーハンド)を同時に撫でられる同期条件と交互に撫でられる非同期条件を経験した.従来の報告と類似して,心電図波形(R波)から180~300ミリ秒の区間で非同期条件の方が同期条件よりも大きい電位が観察された.この結果は,身体所有感と心拍誘発電位の関連性を示唆しており,次年度以降の研究においても心拍誘発電位の指標が有効であることを意味する. また,手指先(末梢)の脈波センサーから心拍を検出する実験システムも構築した.この実験システムも,次年度以降に心拍検出課題(特定の時間間隔で自己の心拍数が何回であったかを知覚する課題)で用いる予定である.令和3年度は,これら構築した実験システムを基に,マインドフルネスを用いた介入研究を実施し,身体所有感(ラバーハンド錯覚),内受容感覚の気づき(心拍誘発電位,心拍検出課題,各種質問紙など),感覚運動制御(タッピング課題など)の変化およびそれらの関連性を調べる予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度では,心拍誘発電位を用いた脳波実験を健常被験者を用いて進める予定であったが,コロナウイルス蔓延により,被験者を対象とする実験を制限せざるを得なかったため,当初の予定通り進まなかった.現在は,脳波-心電図の同時計測を用いて,心拍誘発電位を記録できる手順を確立できた状況であり,今後は研究を加速させる必要がある.また.令和3年度からの研究準備を共同研究者とのオンラインミーティングを通して進めることができた.また,心的介入(マインドフルネス)をZoomで提供するための準備も専門家を交えて進んでいる状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は,ラバーハンド錯覚中の脳波(心拍誘発電位)の計測,心拍検出課題,内受容感覚に関する質問紙(MAIAなど),感覚運動課題を同一の健常被験者(30名程度)に対して実施する.さらに,被験者は8週間のMBSR(マインドフルネス・ストレス低減法)をオンラインを介して実践し,その介入前後で,身体所有感,内受容感覚の気づき,感覚運動制御の変化を調べる予定である.また,この実験群に対するコントロール群の実験を令和3年度後半で行う予定である.マインドフルネスに関しては,専門家2名を研究協力者として迎え入れた.今後の研究好遂行上の課題は,上述の計測実験を行う段階で,コロナウイルス感染症の状況が悪化し,計測が進まない可能性である.この場合は,当初の計測期間(1ヶ月以内に30名のプレテストを完了する)をやや伸ばさざるを得ないと考える.
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の蔓延により,参加予定の学会がオンラインとなり,旅費が発生しなかった.また,実験の遅れによって被験者への謝金が当初よりも少なくなった.次年度では,介入研究における被験者の補助金,マインドフルネスのオンライン提供を行う業者への委託費などが中心となる予定である.
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Research Products
(3 results)