2021 Fiscal Year Research-status Report
筋分化モデル細胞のマイオカイン分泌に及ぼすイミダゾールジペプチドの作用解明
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20K11424
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
數野 彩子 順天堂大学, 大学院医学研究科, 助教 (00338344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 隆 順天堂大学, 大学院医学研究科, 客員教授 (10053373)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マイオカイン / カルノシン / β-アラニン / C2C12 / 骨格筋細胞分化 / 定量プロテオミクス / イミダゾールジペプチド / nanoLC-MS/MS |
Outline of Annual Research Achievements |
マイオカインは骨格筋から分泌される生理活性因子であり、ホメオスタシス維持における役割や、がんや糖尿病など種々の疾患との関連が報告されている。一方、骨格筋にはカルノシンやアンセリンなどのイミダゾールジペプチドが多く含まれる。イミダゾールジペプチドはその緩衝力で骨格筋収縮の代謝生成物である乳酸による筋肉の酸性化を抑え、また抗酸化作用を発揮し骨格筋の収縮を活性化させる働きがあると考えられている。 本研究の目的は骨格筋収縮を活性化するイミダゾールジペプチドがマイオカインの分泌に与える影響を、筋分化・再生モデルとして知られるマウスC2C12培養細胞を用い明らかにすることである。 1%ウマ血清含有培地にカルノシン、または前駆体であるβ-アラニンを添加した培養上清と、コントロールの培養上清を分化7日目まで経時的に集めLuminexアッセイによりマイオカインを定量した結果、brain derived neurotrophic factor (BDNF)、fibroblast derived growth factor 21 (FGF21)、 Follistatin-like protein 1(FSTL1)は分泌が上昇、osteonectin、erythropoietin、osteocrinは変化なく、IL-15、IL-6、irisin、leukemia inhibitory factor (LIF)、oncostatin M、は漸減することが分かった。 一方、イミダゾールジペプチドによるC2C12分化に伴う遺伝子発現への影響を定量プロテオミクス解析で調べ、20年度の解析の再現性を確認する実験を行った。今回もタンパク質輸送やRNA binding関連、細胞骨格、リボソーム生合成関連の遺伝子産物発現が亢進していることが示され、20年度の解析結果を追認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
培地に添加するイミダゾールジペプチドの量等の培養条件の検討を行い想定より時間を要したため、やや遅れている。 C2C12骨格筋細胞の分化に相関して分泌が上昇するBDNFとFGF-21について、分泌量がイミダゾールジペプチドによって有意に増加するかをさらに詳細に検討しようと試みている。これまでは7日間の全分化過程のうち0日から1日の24時間、1日から3日、3日から5日、5日から7日の48時間を区切って培養上清を採取して測定したが、7日間の分化期間全体で比較できるように測定条件を整えながらアッセイする準備にかかっている。 nanoLC-MS/MSを用いた定量プロテオミクス解析のデータで、イミダゾールジペプチドによって2倍程度発現上昇が認められたタンパク質についてウェスタンブロットによる確認を行っている。gene ontology (GO) 解析の結果を精査し、中でも最近筋肉収縮と関連付けられて注目されている足場タンパクの一つがカルノシン、β-アラニンのいずれによっても発現上昇が認められていることに注目している。
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Strategy for Future Research Activity |
BDNFやFGF-21など、C2C12の分化に呼応して分泌促進されるマイオカインの量がイミダゾールジペプチド存在下でさらに促進されるかを見極めることは本研究課題と直結したテーマである。この疑問に最終的な回答を得ることに集中して解析を進める。BDNFは、本来脳や神経組織で産生されるサイトカインとして発見された。我々の研究結果に照らせば、脳や神経組織由来のBDNFが骨格筋に働きかける可能性についても検証することが重要と考える。C2C12の分化に外部から加えたBDNFがどのような影響を及ぼすかという、逆の実験も今後是非検討すべき課題であると考えている。また、FGF-21は骨格筋に強度の大きな運動を付加するほど多量に合成・分泌されることが解ってきた。分化C2C12細胞のFGF-21の分泌をイミダゾールジペプチドがさらに促進する効果が有るかを見極めることは本研究課題に直結する重要なポイントとなる。
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Causes of Carryover |
条件検討及び測定結果の解析に時間を費やしたため当初の計画よりやや遅れが生じた。また試薬キット等の輸入品の納期に時間がかかることがあったため次年度使用額が生じた。今後の実験計画に従いイミダゾールジペプチドとマイオカインとの関連を明らかにするために必要な試薬等の購入を予定している。
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