2020 Fiscal Year Research-status Report
Influences of facing to negative emotional events on gaze direction and postual control.
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20K11432
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
石田 光男 愛知学院大学, 心身科学部, 教授 (00443432)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 健一 愛知学院大学, 心身科学部, 教授 (30207766)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 重心動揺 / 視線計測 / 情動負荷 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目の研究実績について以下に報告する。本課題は,情動負荷により誘発される認知的および運動エラーの発生のメカニズムを,視線移動と重心軌跡動揺のデータから明らかにする研究である。これらの目的を達成するため、初年度においては現存する重心軌跡動揺計に加え、視対象への視線動向を捉えるための視線計測システムの構築と、情動を喚起させるための視覚刺激の作成が主な実績となる。 視線計測システムの選定と特注の仕様の企画開発を行なった。本テーマではディテクト製の視線計測器(ViewTracker3)を導入した。当該製品は計測器の仕様および導入コストの点から、本研究テーマの計測器として適切なものと判断し選定に至った。また当該計測器の計測データに視覚刺激オンセット信号を同期させるため、入力デバイスのための特注オプションの企画・開発を行なった。本オプション開発はディテクト社との共同で行い、同メーカーに作成を依頼した。 また本研究の実験課題に利用する視覚刺激として、表情刺激とNavon刺激の2パターンを必要とするが、2020年度は表情刺激のみを作成した。前者は直接的に情動喚起する刺激として位置付けている。これらについてはATR顔表情データベースを用いて男性3名、女性3名の笑顔、真顔、怒り、嫌悪の4表情を選出し、画像編集ソフトウェアを利用して本実験用に編集した。 以上のとおり、2020年度はCOVID-19の影響により予算執行の遅延や対面式の実験実施が困難のため、計測環境の整備のみとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、2020年度の前半に実験環境の整備を実施し、後半において情動喚起刺激を用いた測定を行う予定であったが、主にCOVID-19の影響を強く受けた。2020年4月以降はCOVID-19の影響が授業実施やその他の学務遂行などの大学業務全般に波及し、予算執行から刺激作成など測定環境の整備が大幅に遅れた。2020年9月以降は一部対面式が再開され平常状態に近づいたが、それ以前の影響を大きく受けた。例えば卒論研究の実験を優先させるなど対策により実験室の利用が集中したこと、感染予防対策およびそれらを含めた倫理規定の変更などが必要となり、実験実施は1月頃までは困難となった。そのため、実験参加者を伴わない作業のみを実施した。 またCOVID-19の性質上、以降数年間は高齢者を対象とした実験参加者のデータ収集について見通しがつき難くなることが予測される。そのため、高齢者擬似体験セットを利用した条件に変更することを計画しており、現在、実験計画を再考中である。このような状況を加味し、データ収集に要する期間は当初の予定より長くなると予測される。さらに2021年度は国内研修により県外の大学へサバティカルとなったため、2021年度予定していた測定の実施は困難な状況である。 以上の理由により現時点で研究の1年延長を視野に入れなければならなくなる可能性が高いと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は実験プログラムおよび刺激素材の作成、データ収集のための環境整備、サンプルデータを用いてデータ分析方法について洗練させていく。研究対象者の変更に伴う実験計画の変更等を検討していく。 本研究ではPsychoPy3を主体としたpythonにより実験プログラムを作成し、視覚刺激の制御、同期信号出力、反応取得の機能を実装する。現在、同期信号の出力についてはLabJackまたはcontec製のDIOボードを利用することにより実施する。そして暗算課題に使用するNavon刺激を作成する。Navon刺激は、小さい文字(local数字)の配置により大きい文字(global 数字)を形成する刺激とし、2つのlocal数字またはglobal数字の和を求める課題を作成する。本課題は認知的負荷による影響を検討するための課題として位置付けている。昨年度に作成した表情刺激も含めて、これらの視覚刺激がスクリーン上にて視角半径15°以内に提示できるよう調整する。 さらに重心動揺波形と視線移動波形の分析については、pythonまたはMATLAB を用いた分析システムの構築を行う。本研究では相互相関係数、コヒーレンス解析を行うため、同期信号による分析対象データの抽出、および波形解析の機能を実装する。 さらにCOVID-19の性質上、数年間は高齢者を対象とした実験参加者のデータ収集について困難であることが予測される。そのため、高齢者擬似体験セットを導入し、身体的制約を伴う状況での測定を準備する。 これらのプログラムとデバイスを用いて、2022年度にデータ収集を積極的に実施し、以降の学会発表および論文投稿につなげている予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、COVID-19の流行により次の理由によるものである。 はじめに国内の学会が相次いで中止、もしくはオンライン開催となったため旅費の使用が極端に少なかったことが影響している。一部はオンライン会議参加のための機器購入に充てたが、予定していた支出よりは少なかった。 次に、対面型の被験者実験の実施が困難な状況であり、謝金の使用が全くなかったことである。研究倫理においても感染防止対策を講じることが求められ、安全な測定環境を整備するための試行錯誤が必要となった。これらの問題により、研究データの取得までに至らず謝金の支払いが発生しなかった。しかしながら今後の謝金の支払いについては、感染状況が落ち着き次第、執行可能となると予測しており、状況に応じて随時使用してく予定である。
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