2022 Fiscal Year Research-status Report
脊髄中の遺伝子発現の変動から神経筋システムの可塑性を調べる方法
Project/Area Number |
20K11444
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
宮田 浩文 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (90190793)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 低酸素刺激 / 呼吸筋支配運動ニューロン / mRNA発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,脊髄の各種mRNAの発現量を比較し,神経系の可塑性を比較的簡単に調べる方法を模索している。本年度は,成熟ラットにおける間欠的低酸素曝露が筋及び中枢神経系の遺伝子発現に及ぼす影響を調べ,神経系の可塑性に関する知見を得ることを目的とした。 成熟ICRオスマウス(n=12、18か月齢:平均体重46.7±4.3g)が用いられた。5匹のマウスは常酸素下で,7匹のマウスは間欠低酸素下にて飼育した。間欠的低酸素は、チャンバー内をO2コントローラーを用いてO2濃度を12.8%に調整し、午前中に15分毎で6回曝露し、連続7日間続けた。両群とも,室温下、12時間の明暗サイクルで管理され、食事は自由摂食とした。すべてのマウスには、ソムノペンチルの腹腔内投与によって麻酔を施し、脊髄の頸髄(C)、胸髄(T)、大脳、小脳、筋を採取した。採取したサンプルは、液体窒素によって凍結し分析まで-80℃で保存した。 これまでの分析の結果、頸髄でold CTLと比較してOPN、NeuNが有意に低発現を示した。胸髄では、NeuNが有意に低発現を示した。また、OPNは低い発現の傾向が見られた。脳では、小脳でコントロールと比較してNeuNが有意に高発現を示した。大脳でもNeuNが有意に高発現を示した。このことから、脊髄においてOPNとNeuNに、脳においてNeuNに何らかの変化があったと考えられる。 当初、低酸素による影響から呼吸ニューロンが存在する頸髄においてmRNA発現量に有意な高発現が見られると予想したがそうではなかった。この要因としては、12.8%の酸素濃度が弱かった可能性、前肢筋の支配ニューロンをたくさん含む頸髄全体ではわずかな変化しか生じなかった可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年目に予定されていた間欠的低酸素曝露が筋及び中枢神経系の遺伝子発現に及ぼす影響に関する実験(サンプリング)はすべて順調に終了した。4年目に予定されている加齢変化に関する実験についてもすでに進行中であり,4年目の前半には,脊髄の分析を進める目途が立っている状況である。積極的に学会発表ならびに論文作成を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
4年目は加齢マウスの脊髄の各種mRNAの発現量を若齢マウスと比較し,加齢変化を検出できるか,さらにその変化は何を意味するか,について以下のように検討する予定である。 12週齢マウス6匹と18か月齢マウス12匹(一部は低酸素曝露)から,頚髄と胸髄を取り出す。それぞれの部位において各種mRNAの発現量を測定し,若齢マウスの値を基準とした,相対的な発現量変化を調べる。
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Causes of Carryover |
令和4年度後期から学部長としての職務が激増し,研究に割く時間がほとんどなくなっている。令和4年度実施の実験はなんとか前期に終了して,サンプリングは終えているが,分析に手が回らない状況である。令和5年度分の実験もサンプリングはほぼ終了しているので,2年間の分析を令和5年度の夏休みを中心に進める予定である。費用のほとんどは,これらの分析のための消耗品代として使用する。
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Research Products
(2 results)