2022 Fiscal Year Research-status Report
自律神経系活動に着目したマスギャザリングイベントにおける熱中症発症のリスク評価
Project/Area Number |
20K11469
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
島崎 あかね 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (40255245)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自律神経系活動 / 心拍変動 / 唾液アミラーゼ活性 / 環境測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度に引き続き、自律神経系活動の測定と環境測定を実施した。自律神経系活動の測定は、若年層(大学生)における学内実習中の心拍変動および唾液アミラーゼ活性の測定を行った。測定日は7月19日(火)午前9時~午後3時までとし、学内での実習(浴衣の着付・茶道)中の心拍変動および実習前・お昼休み・実習後の唾液アミラーゼ活性測定を実施した。実習前にアミラーゼ活性値が高値を示した2名のうち1名は、昼休みおよび実習終了後の活性値も高値を示し、交感神経の活動が優位なままであることが示唆された。ただし、心拍変動の測定地の推移を合わせて検討すると、必ずしも実習時間中の交感神経活動が優位な状態が維持されていたわけではないことから、当該被験者の唾液アミラーゼ活性値のベースライン(平均値)がもともと高い傾向であったことが考えられた。この点も含めて、先行研究や別のストレスマーカー(コルチゾールなど)との関係、心拍変動の値との関係について詳細に分析する必要があると思われる。 一方、2023年2月に過去の大阪地域での大型イベント開催会場である万博記念公園と花と緑の博覧会会場の視察を行った。未だ2025年大阪万博の会場(夢洲)には立ち入ることができないものの、隣接する咲洲にある「さきしまコスモタワー展望台」から夢洲の万博会場の現状を把握するとともに、夢洲と同じく周りが海に囲まれた人工島である咲洲での環境測定、1970年の万博会場であった吹田市の万博記念公園、1990年の「国際花と緑の博覧会」会場であった鶴見緑地といった、自然豊かな公園の視察および環境測定を行ったことにより、大規模イベントの会場の周辺環境と熱中症の関係について、大きなヒントを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
若年層における測定は実施できているものの、熱中症弱者である高齢者に対する自律神経系活動の測定が十分に実施できていない。その一つの要因として、日常的に運動指導している高齢者への協力依頼が十分にできなかったこと(運動指導日が測定に適した天候等の条件設定に合致しないなど、環境条件が整わなかった)が挙げられる。 その一方で、2025年の大阪万博を見据えて、過去に大阪地区で開催された大規模イベント(1970年大阪万博、1990年国際花と緑の博覧会)の会場である万博記念公園や鶴見緑地での環境測定・視察と夢洲の現状把握に出向くことができたので、会場周辺の環境が人体に及ぼす影響について分析・考察する大きなヒントを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
暑熱順化が不十分な時期である5月~6月の晴天が続く日を利用して、暑熱環境への曝露が自律神経系活動に及ぼす影響について、高齢者および若年者(大学生)への測定を実施するとともに、盛夏期の自律神経系活動の把握と暑熱順化の状態と日常生活との関係、熱中症発症の予防に寄与する生活上のヒント(食生活、運動習慣、睡眠習慣など)についてのアンケート調査を実施し、これまでの調査、測定の結果とともに分析を加えて学会への発表および学会誌への投稿によって、このテーマによる研究をまとめる。
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Causes of Carryover |
高齢者層への測定が十分実施できず、被験者への謝金支払、検者およびデータ分析の人件費による支出がなかったため。 2023年は、不足する高齢者層のデータ取得を行うため、測定協力に対する謝金に充てる予定である。また、成果を取りまとめ、学会発表および学会誌への投稿を行うため、その費用に充てる。
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