2021 Fiscal Year Research-status Report
The Origin and Transition of the Concept of Physical Education in the West: An Examination Based on Two Bodies (Biological and Medium)
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20K11471
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中野 浩一 日本大学, 工学部, 教授 (40579728)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 言葉と概念 / 精神と身体 / 教育学と身体 / 知・徳・体 / 身体教育と運動教育 / 体育とスポーツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、海外の先行研究でも行われていない、欧米における身体のための教育(以下、身体教育)の概念の起源と、その概念の変遷について明らかにすることを目的とする。日本における身体教育の概念については、先行研究(木下秀明『日本体育史研究序説』)が指摘するように、明治初期、欧米教育学説の紹介により「体育」という言葉が造語されることに始まる。したがって、その概念の起源は、欧米にあるが、未だに検討されていない。 令和3年度は、前年度の検討結果(近代日本におけるペスタロッチ教育学説の変遷とその影響)に関する原著論文を作成し、東アジア日本学会の学会誌(『日本文化研究』)に掲載することができた。コロナ禍の故、海外での史料収集ができなかったため、近代日本におけるペスタロッチの影響に絞らざるをえなかったが、原著論文として発表できたことは大きな成果と考えられる。 その他には、これまでの科研費で購入できた海外文献の古書を用い、教育を知・徳・体に区分したペスタロッチの教育論を検討した。この三区分は、スイスからイギリスやアメリカを経由し、明治初期の日本に紹介され、「知育」「徳育」「体育」という言葉が日本に普及する。このため、ペスタロッチが教育を三つに区分した理由と、彼の教育論において”physische Erziehung”がどのように位置づけられていたのかを、主著である"Wie Gertrud ihre Kinder lehrt"(1801年)を中心に検討した。そして、彼の"physische Erziehung"の独自性とその後の影響を二つの「身体」の観点から明らかにし、学会で発表する計画であった。しかし、海外の研究機関や図書館へ出張することができなかったため、資料に不足する部分があり、学会発表は諦めざるをえなかった。現在は、手元にある海外資料で明らかにできた部分に限定し、原著論文を作成中である。また、ネットのアーカイブスを活用し、海外の史料収集に努めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度の検討結果(近代日本におけるペスタロッチ教育学説の変遷とその影響)について原著論文を作成し、東アジア日本学会へ投稿した。その結果、査読による審査が通り、学会誌である『日本文化研究』に掲載された。 しかし、既述の「研究実績の概要」で示したように、コロナ禍の故、後回しにせざるを得なかった検討課題があったり、海外での史料収集を諦めざるをえなかったなど、当初の計画通りには行かない部分があった。この結果、2021(令和3)年度は「やや遅れている」という状況にあると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度はヘルバルト(Herbart, J.F.)における身体の扱い方について検討する。 ヘルバルトはペスタロッチから教育論を学んだにもかかわらず、身体教育を否定し、教育目的を精神面の育成に限定してしまう。 しかし、ヘルバルトの全集で「体操(Gymnastik)」に言及する文献を発見したので、二つの「身体」の観点から分析を加え、ペスタロッチとヘルバルトを比較する。そして、その成果を教育史学会で発表する計画である。 今後は、海外渡航が可能となった場合、遅れていた課題の検討を進める所存である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の故、海外渡航が制限され、予定していた海外での史料収集が出来ず、予定していた旅費を消化できなかったため、次年度使用額が生じた。 今後は、海外渡航が可能となった場合、前年度未使用分と令和4年度分の予算を活用し、ペスタロッチの史料収集をスイス、ドイツ、イギリス、アメリカの図書館・資料館で行い、遅れていた課題の検討を進める所存である。
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