2021 Fiscal Year Research-status Report
保幼小接続におけるアフォーダンス特性を援用した体育学習デザイン開発
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20K11491
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
坂下 玲子 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (20178552)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 運動遊び / 体育授業 / アフォーダンス / ケアリング / 共感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度の理論研究を基に子供たちの運動遊び・体育授業をより豊かなものにしていくためのアフォーダンス、ケア/ケアリングや共感(empathy)の視点の援用について実践研究を行う予定であった。対象小学校に聞き取りを行うなかで、2021年の6-7月のけがの発生件数が2019年より増えており、2020年に新型コロナウイルス感染拡大によりあまり体を動かしていなかった影響が考えられたため、2020年に入学時期が遅れ最もその影響を受けたと思われる2年生28名を対象とした。児童の日常生活や運動遊びにおいて出現する基本的動作を考慮し、移動系動作として「跳躍動作」、操作系動作として「投球動作」、平衡系運動として「片足立ち」の3種類について中村ら(2011)の観察的評価法を参考に動作パターンの分析を行った。また、運動場、公園、体育館、教室における遊びについてのアンケート調査を行った。児童の実態を踏まえ、昼休みの時間に、多様な動きが取り入れられるような遊びを提案し、子供たちと遊ぶ中で遊びを変化させながら活動を行った。実践は学生が行い、毎回子供への聞き取りやアンケートを行い、活動の振り返りを行った。運動場、公園、体育館、教室において計10回実施し、遊びや動きの変化等の検討を行った。 運動場でのビニールホースで作った直径25cmほどの輪を用いた遊びでは、実践者は遊び方については何も伝えなかったが、児童が興味を示し、輪投げ、キャッチ、ケンケンパ、フリスビー、フリスビー鬼ごっこと遊びが広がっていく様子が見られた。運動場脇の公園では、ケンケン鬼や形鬼という児童が考えた新しい遊びが行われ、公園の地形や遊具など周りの状況に応じた遊びが行われるなど、事後のアンケートから遊びの内容によって「ヒト(友達)」、「モノ(用具)」、「コト(ルールの変化)」に楽しさを感じ、遊びや動きを広げていくことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度も、新型コロナウイルスの影響で分散登校の措置が取られるなどの影響が見られたが、小学校低学年(2年生)を対象に運動遊びを実践し検討を行った。その結果、子供たちは遊びの内容によって「ヒト(友達)」、「モノ(用具)」、「コト(ルールの変化)」さらに環境(地形や遊具)に面白さや楽しさを感じ、遊びや動きを広げていくことが示された。しかし、年度後半に新型コロナウイルスオミクロン株の流行により、学校現場・保育現場における感染が広がり、予定していた幼稚園での運動遊びの観察および介入実践を中止せざるを得ない状況となり、2022年度に持ち越して行うことになったことから、(4)遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
実践予定幼稚園においても、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、子供たちが家庭で過ごさざるを得ない生活が続き、十分に体を動かす機会が減っており、転んだ時に手をつけずに怪我をするという事例が数件続いたことが報告されている。子供たちの運動機能の発達の現状を捉え、遊びを通した経験の積み重ねについて再確認し、動きの発達を助長していく園での取り組みやアフォーダンスの視点を取り入れた環境の工夫について検討していく。また、当初の研究目的である運動遊びや体育授業における子供のからだが「開き」、からだが「動く」というアフォーダンスの援用の視点に加え、コロナ禍における子供たちの運動遊びや体を動かす機会の減少による動きや運動機能の低下についての検討も加えて行っていく。さらに、特別支援学校小学部の子供たちの動きや運動遊びについても同様に検討していく。 令和2年度および令和3年度に予定し、新型コロナウイルス感染拡大のために遂行できなかった幼稚園・保育園、特別支援学校小学部の運動遊びの観察および介入実践を実施可能となり次第、随時進めていく予定であるが、補助事業期間の延長申請を行い、確実に研究を遂行していく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度も国内外の学会はすべてオンラインでの開催となり、計上していた旅費の使用が無かった。また、予定していた小学校、幼稚園における運動遊びに関する実証研究は、新型コロナウイルス感染拡大のため、熊本市内の小学校での実施のみとなったため、当初予定していた旅費、研究機材等の物品費、消耗品費、研究補助費等の助成金支出が無かった。 令和4年度は、実施可能となり次第対象学校園を県内外にも広げ、データ収集を進め、計画通りの支出をする予定であるが、今年度末に補助事業期間の延長申請を行い、令和5年度の2年間をかけて、確実に研究を遂行していく予定である。
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