2023 Fiscal Year Research-status Report
快楽性食欲との関係性からみた抑制機能の操作による摂食行動の変容可能性
Project/Area Number |
20K11495
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
山中 健太郎 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (90359662)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 反応抑制 / 快楽性食欲 / 恒常性食欲 / 皮質脊髄興奮性 / 経頭蓋直流電気刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では大きく以下の3つの研究を、実施期間中に並行して進める予定である。(1)日常生活中の様々な食物に対する食欲の変動とエネルギー収支をEMAの手法によって評価し、恒常性・快楽性の食欲の変動に相当する成分を抽出する。(2)快楽性の食欲と反応抑制機能の関係性を反応抑制課題のパフォーマンスと皮質脊髄興奮性によって評価する。(3)tDCSを用いた反応抑制機能の操作による依存的食行動変化の可能性を示す。 2020年度から2022年度までの3年間、新型コロナ感染拡大による社会的変化が生じたため、3つの研究それぞれについて、可能な対策を取りながら慎重に研究を進めた。2023年度、新型コロナ感染症の5類移行を踏まえ(1)の日常生活中のEMAの手法を用いた測定の研究をようやく再開した。(2)と(3)の実験的研究についても、様々な制約が解消されたことに伴い精力的に進めた。(2)については、食欲が明らかに異なる条件(食事の前後)を用いて、反応抑制課題のパフォーマンスの変化だけでなく、TMSを用いた皮質脊髄路興奮性の変化についても検討を行った。その結果、食事前後での反応抑制課題中の、遂行/抑制時ではなくその意思決定をする前段階でのMEP振幅(皮質脊髄路興奮性)の変化と、反応抑制機能のパフォーマンス指標であるSSRTの変化に、有意な負の相関関係が認められた。すなわち、食事後に反応抑制課題を行う際の運動準備状態が高まったヒトほど反応抑制機能も向上する、という逆説的であるが興味深い結果が示された。また(3)については10分間の前頭前皮質へのtDCSの影響を、反応抑制課題のパフォーマンス評価だけでなく、実際の摂食量の検討を行う実験的研究を行うための準備として予備的な研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は、それまで3年間に及ぶ新型コロナ感染拡大という状況下で進まなかった研究を大きくすすめることができた。しかしながら全体として、予定した研究課題をすべて完了させるまでには至らなかった。 3つの研究のうち(1)については、2023年度に新型コロナ感染症の5類移行を踏まえて、日常生活の中での測定を再開した。(2)(3)についてはさらに精力的に実験を進め、とくに実験の準備と遂行に時間を要するTMSを用いた皮質脊髄路興奮性を検討する実験を行うことができた。現在は、これらの研究成果の分析を進め成果の発表(学会発表と論文執筆)の準備を進めている段階である。 全体的にみて、2020年度から2022年度の3年間は新型コロナ感染拡大の影響もあり、特殊な環境の中で可能な研究活動を進めるという形になった。2023年度になりようやく当初予定していた測定・実験を進めることが可能になったが、成果の発表の段階に至っていない。それゆえ進捗状況としては当初予定からやや遅れていると評価せざるを得ない。しかしながら2024年度に本研究の再延長申請をし認められたため、残された実験・測定と成果の発表に向けた作業を精力的に進めることで当初の目的は充分に達成できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は3つの研究すべてを、さらに精力的に進める予定である。(1)については再開した日常生活下での測定の結果をさらに分析・評価し、成果としてまとめる予定である。(2)(3)についても、これまで行ってきた実験的研究の成果を段階的に、学会発表や論文発表という形で公表する作業を精力的に行いたい。
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Causes of Carryover |
2020~2022年度の3年間は新型コロナ感染拡大の状況で、長時間の滞在を要する測定が必要な研究を予定通り進めることができなかった。2023年度になりようやく測定や実験を進めることができ、主に研究協力者への謝礼品代として支出したが、最終的に成果を発表する段階まで至らないものが多かった。そこで期間延長をする2024年度においては、学会発表や論文執筆を精力的に進める予定である。それゆえ、学会発表のための旅費や、論文の投稿に必要な英文校正謝金・掲載料などに、2023年度までに使用しなかった予算を当てていく予定である。
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