2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of cellular and molecular mechanisms in the disruption of vagal afferent system causing dysregulated eating behaviors
Project/Area Number |
20K11499
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Research Institution | Shigakkan University |
Principal Investigator |
十枝内 厚次 至学館大学, 健康科学部, 教授 (80381101)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 迷走神経 / 肥満 / 摂食調節 / 消化管 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満は、メタボリックシンドロームを介して生活習慣病の発症を誘導しうる基礎疾患であり、エネルギー摂取が消費を上まるという食行動の異常が引き金となっている。この異常は、我々の本能的行動を司る視床下部の炎症によって惹起されることが知られているが、申請者は、この視床下部の炎症が、腸管の感覚情報を伝達する迷走神経求心路によって齎されることを明らかにしてきた。しかし、迷走神経の重要性は明らかにしつつも、迷走神経が具体的にどのようにエネルギーホメオスタシスに貢献しているのかはまだ不明な点が多い。本研究は、、①腸管の炎症と迷走神経の関係、②迷走神経の炎症情報伝達物質、③ 迷走神経節のマクロファージ様細胞の役割、④予防・治療効果と炎症情報伝達機序との接点を明らかにしていくことを目標としている。本年度は、COVID-19感染拡大の余波を受け、教育へのエフォートの増加により、研究活動へ十分なエフォートを割くことができなかった。しかし、これまでに行った研究データに基づいて、解析を続け、迷走神経が食の方向性を決めている事実を突き止めた。消化管から分泌される摂食亢進と抑制のホルモンは同一の迷走神経を刺激していることを明らかにするとともに、摂食行動の惹起、摂食行動の継続、摂食行動の停止、摂食行動停止の継続について迷走神経が中枢に伝達する情報を選択していることが明らかとなった。従って、迷走神経機能の破綻の可能性がある高脂肪食摂取についてそのメカニズムを突き止め、食行動の正常化と肥満の抑制に繋げていくことは重要であると認識を深めた。今後、実施計画にそって、継続して研究を推敲していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19の感染拡大に伴い、オンライン授業や対面授業などの複雑に変化していく教育へのエフォートの増加や大学施設の利用制限などに伴い、十分な研究遂行時間を確保することが難しかった。一方で、迷走神経を介した摂食調節機構について、従来より進めたきた研究に目処がたち、論文執筆を行い、Scientific Reports (2020)に掲載された。迷走神経が食行動の決定に重要な役割を担っていることが強化され、本研究課題の重要性もさらに増した。今後、申請課題の実験をスケジュール通り実施していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
肥満は、メタボリックシンドロームの基礎疾患であり、肥満によって生じる高血圧、認知症、糖尿病などの疾患を肥満症と呼ぶ。肥満の予防は、「健康日本21」で健康寿命の延伸を掲げる我が国に取って喫緊の課題である。近年、摂食行動の異常が脳内の本能的行動を司る視床下部の炎症によって、摂食抑制に働く神経の選択的アポトーシスによって齎されるが、ではなぜ視床下部に炎症が生じるのかという問題は未解決である。申請者は2002年以降、迷走神経の求心情報を通じたエネルギー恒常性の重要性を継続して報告してきた。その研究の過程で、迷走神経を切断すると高脂肪食による視床下部の炎症が予防できる事を明らかにし、迷走神経求心路の情報が視床下部の炎症の引き金になることを報告した。これらの研究は、世界に先駆けて迷走神経の炎症情報伝達という新たな現象を明らかにしたものの、その機序の解明にはまだ程遠い。特に炎症という情報が何によってどの様に伝達されているのかは、将来の治療法確立に向けて解明すべき課題である。申請者はこれらの継続した研究の中で、高脂肪食摂取によって細胞で起こる特異的な新たな生体反応を確認しており、この生体反応を明らかにしていく過程で、迷走神経求心路を基軸とした食行動の破綻の解明を行っていく。具体的には、①腸管の炎症と迷走神経の関係、②迷走神経の炎症情報伝達物質、③迷走神経節のマクロファージ様細胞の役割、④予防・治療効果と炎症情報伝達機序との接点について明らかにしていく。令和2年度は主に、実験系の確立を行う予定であったが、十分に実施できなかったことから、実験系の確立と合わせて、実験検証も行っていく予定である。特に①と③は独立した実験課題として実施予定であったが、同時に研究を進め、パラビオーシス術によって確立した2頭のマウスの解析をすることで目的を課題を達成したいと考え、研究期間内での目標達成を目指したい。
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Causes of Carryover |
令和2年度は教育のエフォートが増大したため、十分な研究活動ができなかった。令和3年度は、オンラインなど教育に関する対応の準備が整ったことから、研究活動を実施可能な状況になった。令和2年度に実施予定だった分も含めて、令和3年度に実施予定である。
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Research Products
(2 results)