2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞内脂質シグナルを標的としたβ細胞量増大による糖尿病治療の確立に向けた検証研究
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20K11512
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
金子 雪子 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (00381038)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 智久 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (10201914)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 膵β細胞 / 糖尿病 / ジアシルグリセロール / ジアシルグリセロールキナーゼ / 細胞増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
1型糖尿病のみならず、2型糖尿病でもβ細胞量の減少が認められる。そのため、β細胞量を回復させることができれば、インスリン分泌が改善し、糖尿病の根本的治療に繋がる。発生段階では、前駆細胞からの分化により膵β細胞が形成されるが、生後は既存のβ細胞の自己複製によってβ細胞量は増加すると考えられている。しかしながら、胎生期以降のβ細胞はほとんど増殖せず、成体期にβ細胞増殖を惹起させるのは困難である。しかし、インスリン抵抗性や膵切除のようにインスリン需要が高まる条件下ではβ細胞は自己複製する。インスリン抵抗性下ではinsulin receptor substrate-2 (IRS-2) を介した経路、膵切除下ではIRS-2非依存性の細胞周期亢進による自己複製経路と、別々の経路を経て自己複製されることが証明されている。申請者らが作製したβ細胞特異的ジアシルグリセロールキナーゼ (DGK) δ欠損 (βDGKδ-/-) マウスでは、β細胞の複製によるβ細胞増殖亢進が認められる。そこで本研究では、β細胞DGKδの抑制が糖尿病の治療標的となり得るのかについて検証することを目的としている。今年度はDGKδ抑制による成体期におけるβ細胞増殖の検証および、DGKδ抑制による細胞増殖機構ならびに核外移行機序の解明を目的とした。 今年度の研究において、DGKδ抑制により、β細胞増殖亢進作用が認められること、その増殖亢進作用には、Cyclin B1の核内移行促進による細胞周期の亢進が関与することを明らかにした(Sato et al., FASEB J 2021)。また、細胞増殖亢進機序にPKCα活性化の関与を示唆する結果が得られた。また、米国ジャクソン研究所よりMIP-CreERTマウスを導入し、繁殖を始めているところであり、誘導型DGKδ欠損マウスの作製準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度、DGKδのβ細胞増殖抑制作用について証明し、英文誌に掲載されたこと、膵β細胞株を用いた実験などで、DGKδによる細胞周期亢進作用に関し、PKCαの関与が示唆された結果を得られたことなどから、一部の目的については、順調に進んでいると考えられる。一方で、MIP-CreERTマウスとDGKδflox/floxマウスの交配を進める予定であったが、コロナ禍による米国からの動物の輸入の遅れや研究室での実験活動の中断などがあり、動物の繁殖や核外移行シグナルの検討が当初の予定より進行に遅れが生じた。したがって、進捗状況についてはやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画にしたがい、引き続き研究を遂行していく。まずは、遅れが生じている誘導型DGKδ欠損マウスの作製を引き続き行い、今年度中に交配を重ね、タモキシフェン投与により誘導型DGKδ欠損マウスの作出を行う予定である。それに伴い、血糖値や耐糖能、血中インシュリン値、膵β細胞量など各種パラメーターについて解析を行っていく。また、DGKδ核外移行メカニズムについて、免疫染色法での内在DGKδの局在の解析の他、DGKδ発現プラスミドを用い、DGKδ局在変化の機序の解明を進めていく予定である。
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